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第五章・仲直り大作戦
「玲、明日は非番だな?」
そう話しかけてきた秋也に、玲(もりおか れい)は少し固い笑顔を向けた。
「え? うん。そうだけど」
返事をしながら、すでに頭の中は逃げと言い訳を考えている。
秋也には、そんな玲の心理が手に取るように解かる。
だが、言わずにはいられない。言わないわけにはいかない。
「よかったら、今夜一緒に食事でもしないか。いい店を見つけたんだ」
「え、あ、うん。でも、ごめん。ちょっと頭が痛いから、今夜は遠慮しとくね」
心の中で溜息をつきながら、それでも秋也は畳みかけた。
「それなら、お前の部屋でのんびりしてもいい。夕食は、俺が作ってやるから」
その申し出に、玲はもう一歩二歩と後ずさりながら尻尾を巻く準備をしている。
「ううん! 悪いから、いいよ。ごめんなさい、一人で静かに寝てたいから!」
そして、秋也が何かを口に出す前に、ぱたぱたとその場を去ってゆく。
そんな玲の後ろ姿を見送りながら、秋也は今度は実際に大きなため息をついた。
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