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第五章・2
「はい、残念でした~」
茶化すような声と、拍手があがる。
笑う 拓斗の姿がそこにはあった。
しかし、その眼までは笑っていないことに、秋也は気づいていた。
断られるのは、フラれるのは自分だけではないのだ。
拓斗もまた、このところ玲から色よい返事をもらえないことは知っている。
互いに顔を見合わせ、がっくりと肩を落とす。
高い代償になってしまった。
先だって、激情に任せて玲を無理やり乱暴に犯した拓斗と秋也。
玲はそんな彼らを許し、水に流すかのように自ら進んで体を与えた。
だがしかし。
潜在意識には、自分を怖い顔をして組み敷いてきた二人の姿がかなり強烈に残っているらしい。
その後、一度たりとも体を許してくれないのだ。
いや、それどころかキスすらしていない。
いや、さらにいうと一緒に食事をすることまで敬遠している。
突き詰めていえば、二人きり、三人きりになることを極度に恐れている。
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