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第五章・3
疲れてるから、おなかが痛いから、頭が痛いから。
そんな言い訳をして、逃げの一手を打つ玲。
さすがにこう毎度毎度になると、鋭い拓斗は気づく。
鈍い秋也でさえ気づく。
俺は、俺たちは、玲に避けられている。
また、あんな怖い目に遭うのではないか。
そんな玲の恐怖と不安は解かる。
解かっているからこそ、悩む。
取り返しのつかないことをしてしまった。
そう気付くことに、さほど時間は要らなかった。
「俺は、もうダメだ」
そう言って頭を抱える秋也。
頭を抱えたいのは拓斗も同じだったが、二人してただ落ち込んでいるわけにはいかないので、今回は一つの提案をたずさえて秋也の元へとやってきていた。
「人魚姫を陸に揚げる秘策を、魔女からいただいてきたんだけど?」
「魔女?」
「福田先生だよ」
そう言って、拓斗は茶色の小瓶に入った液体を軽く振って見せた。
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