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第五章・6

 バスルームに消えた玲を見送った後、二人は顔を見合わせた。 「首尾は?」 「上々」  拓斗は、空になった茶色の小瓶を掲げた。  中身は、玲のワインのグラスにそっと忍ばせた。  あと2時間もすれば効いてくるはずだ。  失敗は許されない。  そう緊張しつつも、久々に玲が味わえると思うと胸が弾んでくる。  珍しく鼻歌など歌いながら食器を洗う秋也に、内心ギョッとしながら拓斗は笑った。 「浮かれてんじゃねえよ、馬鹿」 「お前こそ、口笛を吹くのをやめろ」  二人の男はにやにやしながら、今夜の作戦に心躍らせた。

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