144 / 256
第五章・6
バスルームに消えた玲を見送った後、二人は顔を見合わせた。
「首尾は?」
「上々」
拓斗は、空になった茶色の小瓶を掲げた。
中身は、玲のワインのグラスにそっと忍ばせた。
あと2時間もすれば効いてくるはずだ。
失敗は許されない。
そう緊張しつつも、久々に玲が味わえると思うと胸が弾んでくる。
珍しく鼻歌など歌いながら食器を洗う秋也に、内心ギョッとしながら拓斗は笑った。
「浮かれてんじゃねえよ、馬鹿」
「お前こそ、口笛を吹くのをやめろ」
二人の男はにやにやしながら、今夜の作戦に心躍らせた。
ともだちにシェアしよう!