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第五章・14

 甘いフレンチトーストの香り。  フルーツたっぷりのサラダに、ふわふわのオムレツ。  よく泡立ったカフェオレ。  そして、秋也が用意した摘みたてのイチゴを前にして、玲はにこにこと笑っていた。  笑っていた、が。  そんな素敵な朝食の向こうにいる拓斗と秋也の顔を見ると、体がじんじん火照ってくる。  ひとりでに、深い息が漏れてくる。 「ねえ、昨夜はふたりともリビングで寝たんだよね?」 「あぁ、そうだよ」 「ソファで寝た」  そうだよね、とうなずく玲。  そう、彼らが夜中にこっそり僕の体をいじったなんて考えられない。  そんな跡は、どこにも見られないのだから。  やっぱり、あれは夢?   夢にしては、やけに生々しかった。  彼らの体温が、すぐそこに感じられるような、リアルな夢だった。  そして何より……。

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