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第五章・27

 翌日、拓斗と秋也は大きな菓子折りを持って福田を訪ねた。 「ありがとうございましたッ!」  深々と頭を下げる二人に、二度目はないからね、と福田は念を押した。 「今度あんなことがあれば、人魚姫は泡になって永遠に消えてしまうから充分気をつけることだね」 「肝に銘じます」  二人を見送り、空になった茶色の小瓶を薬品棚へ片付けていると、入れ違いに再び訪問者が現れた。 「こんにちは、福田先生」 「おや、守岡くん」  医療所に現れた玲を見て、福田はホッとした。  その表情は、喜びの笑顔にあふれていたからだ。 「うまくいったみたいだね」 「はい」  そう言うと、玲は手にした緑の小瓶を福田に渡した。

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