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第五章・28
秋也に17日の夕食を取りつけられた後、悩みに悩んだ玲は、この緑の小瓶を福田から受け取っていた。
人間の闘争本能を削ぐ効力のあるというこの薬を飲ませれば、拓斗や秋也が玲を乱暴に襲うようなことは決してありえない、とのお墨付きだった。
玲は緑の小瓶の薬を、そっと二人のグラスに仕込んでいたのだ。
「何事もなく過ぎたってこと?」
「え? えと、あの。えへへ」
自分が我慢できずに拓斗と秋也とを誘ってしまったのだ、と玲は告白した。
でも、二人ともとても優しかった、と。
乱暴なことは何一つなく、素敵に愛を交わせた、と。
それは何よりだったね、と福田は玲の肩を叩いた。
「愛してる? あの二人を」
「……はい」
幸せそうな笑顔だ。
どうしてあんな馬鹿で阿呆な男共を、と思わないこともなかったが、本人が好きだと言っているのだ。
いたしかたあるまい。
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