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第五章・29

 弾んだ足取りで医療所を去る玲の姿を窓から見送った後、緑の小瓶を薬棚へ片付けていた福田は、ふと思い直してふたつの色違いの小瓶をデスクの上へ並べた。  そして、ただの水を中に入れた後、小瓶に小さなバラの花を挿した。  茶色の小瓶に二本、緑の小瓶に一本。  もう、二度とこの薬を使うことなどありませんように。  福田の願いに応えるように、三本のバラの花は風に揺れた。

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