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第六章 バラよりも甘く

「やばい」  財布を手に、拓斗は呟いていた。  明日は、女とデート。  だが、軍資金が心もとないのだ。  彼女は、金のかかる女だ。あれやこれやと貢がせてくる。  しかし、そのおねだりがあんまり可愛いものだから、ついつい買い与えてしまう。  給料日は3日後。  どうしたものか。 「ギャンブル、だな」  しかも、絶対に勝たねばならない。  とぼしい元手を、万倍に増やさねばならない。  しかし、拓斗はにんまりと笑っていた。  絶対に勝てるカモを知っているのだ。  財布を手に、拓斗はマンションの自室を出てエレベーターで上へと登り始めた。  途中、秋也を誘った。  1対1だと不自然に勝ってしまう。  3人で勝ったり負けたりしていれば、怪しまれる事もない。

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