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第六章・3

 どうしたものかと考えている時に、拓斗と秋也が財布片手にやってきた。 「ポーカー? やるやる!」  拓斗の申し出に、玲は飛びついた。 「金、賭けるぞ。いいか?」  うんうんと、首を縦に振る玲。 「あのバラ、絶対欲しい!」  やれやれ、まだ諦めてなかったのかと拓斗と秋也は呆れた。  一緒に博覧会に行き、物欲しげに1時間もその前を動かなかった玲の姿は、まだ記憶に新しい。  ほんの少し。  ほんの少し勝てばいいのだ。  玲は、もうバラを手に入れた心地でトランプを配り始めた。

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