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第六章・9

「借用書、書くか?」  秋也が紙とペンを一応用意する。  のろのろとペンを取る、そんな玲の手を拓斗が抑えた。 「そんなもん書いたって、ちゃんと払ったためしなんかねえじゃねえか。やめとけ」  確かに真実だが、人は図星を指される事を一番嫌う。  玲のなけなしのプライドは、ひどく傷つけられた。 「払うもん!」 「来月、文無しで暮らすのか? できっこねえよ」  悔しいが、これも図星だ。  ふるふると震える玲の声は、小さくなってしまった。 「払うもん……」

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