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第六章・26
いや、と拓斗は手を振った。
「悪かった、謝る。だからさ、お詫びのプレゼント受け取ってくれ」
プレゼント? と玲は改めて二人を見やった。
じゃ~ん、と拓斗の掛け声とともに、秋也が隠していた鉢植えを差し出した。
「僕が欲しかった、あのバラ!」
駆け寄って、思わず花に頬擦りした。
「ありがとう! ありがとう、二人とも!」
でも、とそこで気づいた。
お金は?
二人とも、お金が要るから僕をポーカーに誘ったのでは?
「女とは、別れた」
お前の方がずっとずっと可愛いって気づいたからね~♪ と軽口を叩く拓斗。
「本は、3日後の給料を待てば済む話だ」
ロシア文学全集よりお前の方がおもしろいからな、と照れながら言う秋也。
二人とも最高、と玲は両手のひらで頬を包んだ。
そして、その頬を少しだけ染めて、口にした。
「あの、ね。お礼のキスをしても、いい?」
そして、にっこりうなずく二人の頬に、軽くキスをした。
これは羞恥とは無縁の、真心のキス。
甘いバラの香りは三人を包み、幸せな時間が刻まれ始めた。
バラの香りよりも、甘い甘い時を刻み始めた。
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