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第七章・27
「うまそうな菓子だけどよ、これクリームをつけて食うと、もっと美味いんじゃね?」
「それもそうだな」
二人の眼が怪しく光る。
玲は身をすくめて菓子折りを抱きしめた。
「ヤだ! 絶ッ対に、イヤ!」
冗談だよ、と拓斗がコーヒー豆を用意する。
「確か、幸せを呼ぶ縁起物の菓子だったんじゃなかったか? それ」
「あぁ」
しかし、と秋也は脱いだ上着を玲に渡しながら考えた。
もうすでに、俺は充分幸せなんだ。
思えば、甘いものを克服するため、とあんな馬鹿騒ぎを真面目にやってくれる友人など、どこを探してもいないのではないか。
幸せなら、俺はいいからこの二人に降りたちますように、と秋也はコーヒーの香りを胸いっぱいに吸い込みながら祈った。
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