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第19話

 泡に塗れた陽の両手が睦月の首に回る。  上から下へと滑る手に喉がコクリと鳴った。情欲を伴わないはずの行為にも関わらず、背中を撫でられるだけで、目の前の鏡に映る自分の姿は淫らに濡れていく。  瞳には薄っすらと膜が張り、頬は赤らんでいる。陽を必死に誘っているかのように、開いた唇の隙間から赤い舌が覗き揺れていた。  背中から胸元へと手が這う。女性のように敏感に立ち上がる乳首に手が掠り、ピクリと身体が震えた。 「ん……っ」  もっと触って欲しいのに、大きな手のひらは肩から腹部までを往復し、太ももへと移る。足の間、際どい箇所を撫でるように通り過ぎ、ピンと立った足のつま先が幾度となく快感に揺れた。 「やっ……ちゃん、と……」 「ちゃんと、なんだよ?」  鏡越しに映る陽の瞳が、野生的な艶気を湛えて光った。 「……触って。あぁっ……ふ、ぅ」  足を撫でていた陽の手が、胸元に戻ると、今度は快感を与える意思を持って胸の尖りに触れられる。クリと抓まれ、待ち侘びた快感に甘い声が漏れた。 「お前、ココ好きだな」  グッと力を込めて引っ張られても痛みは感じない。ただ、赤みの増した乳首が快楽を享受し固さを増すだけだ。 「ん、好き。もっと……して? ね、陽さん……ほしいの」 「なにを?」  話しながらも手は止まらずにクリクリと突起を弄られる。小さく声を漏らしながら、睦月は後ろに手を回し腰に当たる昂りに触れた。 「これ、ほしい……も、待てな……して」  陽の昂った性器が、睦月の手の中でビクンと大きく震え硬さを増した。先端を親指で弄ると、トロリとボディソープとは異なる滑りを感じる。 「俺の中で、出して?」 「……っ」  睦月の胸元を焦らすように遊んでいた陽の手に、強く腰を引き寄せられる。バランスを崩し陽の胸元に倒れ込むと、床の上で顎を持ち上げられ唇が重なった。 「んんっ……はっ、ん」 「この、エロガキ」  腰に回った手は睦月の尻を撫でる。ボディソープの泡を塗りたくるように尻の間を陽の太い指が何度も行き来した。 「そういうの、嫌い?」 「エロいのが嫌いな男はいねぇだろ。でも……俺の余裕がなくなる」  猛々しく上を向いた屹立と熱っぽく吐きだされた息が、その余裕のなさを証明していた。  クチュンクチュンと淫らな音を立て、荒々しい手付きで後孔の周りを擦られる。その間も口腔内を蠢く舌は、激しく睦月の情欲をかき立てた。ゾクゾクと腰から脳天に突き抜けるような快感が走る。  濡れるわけもないのに、じっとりと後孔の中が濡れてくるような、そんな快感。 「あぁっ……も、指……っ、ちゃんと……し、て」  睦月の言葉と同時に、陽の指が中へと挿れられた。キュッと締まった襞を一枚一枚捲るように慎重に内壁を拡げられる。そんなに優しくしなくていいのに、もっと酷くしてもいいのにと、焦燥感ばかりが募った。  時折指をかき混ぜられると、蠢く襞が締めつけるように収縮する。チュプチュプと抜き差しされ、今どこまで指が入っているのかもわからなかったが、陽の屹立がココに入るのだと想像するだけで、睦月の身体は悦びに震えていた。 「はぁっ……ん、これ……欲し」  尻だけを高く上げる体勢を取らされる。すぐ目の前には、陽のそそり勃つ欲望があり睦月は期待に喉を鳴らした。つい、自分よりも太く長さのある性器に頬をすり寄せてしまう。  知識として知ってはいるが、もちろんしたことはない。けれど、唇で彼のものに触れようと思ったのは自然だった。  陽が睦月を欲しいと思ってくれるなら。もっと、余裕をなくして求めて欲しい。 「む、つき……っ」 「ん……陽さん、の好き……」  チュッと亀頭の穴に口付ける。滑りのある先端を舌で舐めとると、口内に苦味を感じた。ビクッと脈動する屹立を口の中に吸ってみたら気持ちいいかなと、陰茎に舌を這わせながら含んでみる。 「だから、エロ過ぎ……だっつの……っ」  チュプチュプと舌をなぞらせながら深くまで飲み込んだ。唇で快感を与えられるように、陰茎に吸い付きながら口を上下に動かす。  口の中が粘着性のある体液でいっぱいになる。感じてくれているのだと知れば、ただただ嬉しい。コクリと喉を鳴らして溢れる唾液ごと飲み込むと、頭上で息を詰める気配がした。  睦月の中にある指が増やされた。ふと顔を上げて陽を見れば、劣情に煽られながら睦月を見つめる男の顔がある。 「気持ちい?」 「ああ……抑えられないぐらいにな」  陽の汗が背中に滴り落ちてくる。柔襞を抉るように指が回されて、浅くザラザラした箇所を擦られると言いようのない凄絶な感覚が脳芯を突き抜けた。 「やぁぁっ……」 「気持ちいいとこあったな」  嬉しげに言われて、同じ箇所を何度も指で擦られる。思わず昂りから口を離し、ハクハクと息を吐き出しながら胸声を上げる。 「はぁっ、ん……そ、こ……っ、変になるからっ」 「変になれよ。もっと気持ちよくしてやるから」 「ダ、メっ、ダメ……で、ちゃう、も……ぁ」  規則的に指を抜き差しされ、敏感な箇所を掠めながら奥を突いてくる。身体に電流が走ったように腰が震え支えていられなくなると、陽の手が伸びてきて腰を押さえられる。  グチュグチュっと耳を塞ぎたいほどの淫靡な音が浴室に響く。睦月は恍惚とした声を上げながら、すぐそこまで来ている愉悦の波に呑まれていく。 「ひっ、あぁぁっ!」  触れられてもいないのに、睦月は激しく吐精してしまう。腰を高く突き上げたまま、ビクンビクンと陽の指を締めつける。 「あ、はぁっ……はっ」  出しっぱなしになっていたシャワーを止めた陽に、力の入らない身体を抱きしめられ、バスタオルに包まれたまま寝室へと連れて行かれた。  真っ暗な部屋で目が慣れずにいると、枕元にあるランプが点けられて、眩しさに目を細めた。  明かりに照らされた陽の逞しく均整の取れた身体に目が惹きつけられる。浴室でも何度も見たはずなのに、何度だって自分は簡単に恋に落ちる。 「逆上せてないか?」  陽の言葉に頷くと、腰の下にクッションを入れられて太ももが持ち上げられた。攣りそうになるほどに足を開かされて、羞恥に頬を染める間もなく後孔に昂りが押し当てられた。ヒクヒクと収縮する蕾が陽を受け入れるべく開かれる。 「悪い……ちょっと、抑えらんねえかも」 「痛くても、いいです……」  グッと性器が押し込まれ、濡れた先端が飲み込まれていく。ボディソープで潤った後孔は、抵抗なく陽の欲望の先端を飲み込んでいったが圧迫感はひどい。 「あ、くっ……ん」 「ゆっくり、息吐けよ」  一番太い亀頭が中を押し拡げる感覚に痛みが走り睦月は眉根を寄せた。眉間にキスを落とされて、胸の尖りを抓みがら舌先がチロチロと粒を舐め上げてきた。 「あぁっ……」  男が感じるはずのない突起を舐められ、感じてしまう自分が恥ずかしくてならない。唾液を絡めながら舐られて、濡れて凝った乳首をコリコリと爪弾かれる。 「ふ、あっ……」 「ココ、自分で弄れるか?」  強い快感に、下肢に感じる痛みのことを一瞬忘れていた。  睦月は小さく頷いて両手で胸の頂に触れた。濡れた手の感触が気持ちよくて、自分の口元に持っていった指を一本ずつ舐めた。  それを見ていた陽の喉が上下に動いたのがわかった。 「陽さん……俺がエッチなことするの、好き?」 「ああ……そりゃ、な」  自分のあられもない姿に興奮してくれているのかと、陽の瞳を覗き見る。熱のこもった琥珀色の瞳には、艶めかしいまでに乱れた自分の姿が映っていた。  唾液で濡らした指先で小さな粒を捏ねる。どうすれば気持ちがいいかなど、自分の身体のことだ、わからないはずがなかった。 「はぁ……あっ、ん」  円を描くように乳輪を擦り、ツンと尖った先端を捏ねくり回す。ヌルリと唾液で滑るのが気持ちよく、動かす手が止まらなかった。  胸への行為に夢中になっている間に、足を持ち上げられ脈動する怒張が一気に最奥まで突き挿れられた。 「あぁぁっ!」  痛みはなかった。ただ、本来受け入れる場所ではない後孔への異物感が酷い。しかし、それ以上に己の体内で脈打つ彼の欲望を感じて、ただただ幸せだった。 「へ、いきか……っ?」  陽も苦しいのか、額には汗が滲みでていた。シーツに落ちた汗と、邪魔くさそうに髪をかき上げる仕草に、大人の色気と獣のような野性味を感じて、睦月はうっとりと目を細めた。 「陽、さん……き、れい」 「十六も歳下のガキだと思ってたのになぁ……お前にこんなに翻弄される日が来るとは思わなかったよ」

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