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第20話
綺麗って言うなら、お前だろ──と艶めいた低い声で囁かれて、ズルッと性器が浅い場所を擦りながら引き抜かれる。
「あぁっ、や……っ」
「いや?」
「抜いちゃ、ダメ……」
「抜かねえよ……っ」
ギリギリまで抜かれた性器が、グチュッと淫音を立てながら再び奥深くへ挿入する。抽送を繰り返しながら柔襞を刮げられる快感に、睦月の身体は戦慄いた。
「あっ、ひぁっ……」
「もう、無理だ……悪い」
何がと聞く前に、ギシギシとベッドが軋む。肌と肌がぶつかり合う音がするほどの激しさで、陽が腰を打ちつけ始めた。
ズルリと太い陰茎が内壁を擦る感覚に、目眩にも似た陶酔感がやってくる。絶頂へと押し上げてくる愉悦の波に、睦月は陽の背中に縋りつくことしか出来なかった。
「あ、あっ、はっ、ん……ダ、メ、はげしっ……」
「睦月……っ」
自分の名を呼ぶ声色が余裕を失くす。荒い息が顔にかかり、抑えられずに高く上がった声が陽の唇の中に飲み込まれた。
「んんんっ……!」
グチッグチッと結合部から立つ濡れ音は激しさを増して、陽の先走りが後孔から尻を伝いシーツを濡らす。葉月が起きはしないかと頭を過ぎったが、それで止められるはずもなかった。
ゴリゴリと浅い場所を擦られる。その度に睦月の屹立はぐっしょりと濡れてしまう。
唇が離され、荒く息を吐きながら手を下肢へと伸ばした。
「こっちも、自分で弄るのか?」
口角を緩く上げからかい交じりに告げられて、睦月は涙に濡れた視線で陽を睨んだ。
「やぁっ……だって、が、まっ……できなっ」
「しろよ。見たい……お前が自分でするとこ」
腰を動かすのは止めずに、濡れた先端を指で弾かれる。それだけで、腹に付くほど反り返った屹立の先端からは新しい蜜が噴きだした。
「ほら、弄れよ」
「ふっ、ん……っ、あぁっ」
亀頭をグリグリと刺激しながら自ら硬い陰茎を擦ると、中に入った陽をも締めつけてしまう。
「っ、あんま締め付けんな……保たないだろ」
「む、り……っ、あぁっ、気持ちいっ」
グチュングチュンと腰の動きに合わせて、手のひらを強く握る。溢れた体液を塗りこませるように夢中で手を動かした。
ハッと荒く息を吐きだした陽の瞳が熱に浮かされ、睦月の手を凝視している。その瞳の動きに、睦月の情欲はいっそう高まった。
「あっ、陽、さっ……見て、白いの出ちゃうと、こ……いっぱい」
「おま……っ」
内壁がヌルリと温かな何かで溢れていく。グッと息を詰まらせるように、陽が身体を強張らせ、中に入ったままの肉棒がビクンと大きく震えた。
「よ、う、さん……イッちゃった? 俺の、中いっぱい……出てる。も、俺も……やぁ、ん、もイク……イッちゃ……っ」
なにを口走っているかもわからず喘ぐ。背筋が仰け反り真っ白い世界が落ちてきた。
手のひらに覚えのあるヌットリと絡みつく精液。最後の一滴まで絞りだすように腰をスライドされると、後孔からは陽の射液がトロトロと流れでた。
「あ、ふっ……陽さんの、出てる……お尻、から。あぁぁっ……ま、た、入っちゃうっ」
精液ごと後孔に再び屹立が押し込まれる。達した後も、陽の昂りは収まらない。まだ欲情してくれていることが嬉しい。
「一回で終わんねえって言ったよな?」
陽が動く度に、結合部からは陽の吐精が溢れだす。
「ここ、俺のが出てきて……すげぇ、エロい」
陽は後孔を凝視しながら興奮し切った声で告げてきた。内壁を味わうように、ゆっくりと腰が動かされる。
「あっ、あぁっ、あっ……」
「ほら、入ってるとこ……お前も見えるか? 今度は、自分で触んの禁止な」
ズルリと引き抜かれた陽の浅黒い性器の周りが、白濁に塗れている。またグチュンと淫らな音を立てて睦月の中に埋まっていく様は、心臓が激しく波打つほどの興奮がもたらされる。
「あっ、ん……見える、からぁ……もっと、奥っ、突いて」
ゆっくりと動かされるのはひどくもどかしい。
睦月が腰をくねらせながら訴えるも、陽は耳を貸してはくれない。自身の昂りに手を伸ばすと、陽の手に邪魔をされた。
「やぁっ、おねが……っ、もぅ……我慢できなっ、奥、してぇっ」
焦らされ続けた睦月の欲望は、ジンジンと痛いぐらいに反り返り張り詰めている。
「奥、な」
勢いよく腰を打ちつけられて、身体が波打った。自らの快楽を得るような激しさで奥を穿たれ、睦月は待ち焦がれた快楽に身を任せた。
「あぁっ、そ、こっ……イイっ、ふ、あぁっ……こわ、れちゃっ」
ガクガクと揺さぶられて壊れてしまいそうだ。けれど、飛び散る陽の汗と、中を蠢く昂りに息苦しいほどに胸がいっぱいになる。
「陽、さっ……好き……大好き」
荒く息を吐きだしながら苦しいほどに抱きしめられて、陽からの言葉はなくとも俺もだよと言っているような気持ちが伝わった。
中を擦る性器が、一回り大きく膨れ上がった。打擲音が室内に響く。
体液が混ざり合う卑猥な水音が後孔から聞こえ、頭の芯が痺れるほどの恍惚感に浸される。腰が一気に重くなり、陰嚢に溜まった精液が噴きだした。
「んぁぁっ!」
達した瞬間、身体が痙攣するかのように震える。まるで搾りとるかのように陽の屹立を締めつけてしまうと、柔襞に生温かい射液が注がれた。
「お腹、いっぱい……」
食いもんかよ、と艶気を含んだ低く弾んだ声で告げられる。だってと甘えたな声を返せば、ズルリと引き抜かれた感覚に嬌声が上がった。
「ひぁっ……」
「こら……んな声出すなよ。止まらなくなる」
コツンと額を小突かれて、意図した訳ではないのにと口を尖らせた。身体が重く、動かせる気がしない。気怠げにシーツに身体を沈ませていれば、陽が隣に寝転んだ。
首の下に腕を入れられて引き寄せられる。再び唇が重なり、深くなるかに思えたそれは触れるだけに留まった。
チュッチュと、軽く啄ばむように角度を変える。徐々に首筋へと下りていった唇が、睦月の首に吸いついた。
「……っ」
チリっと痛みを感じる程度ではあったが、何と目を瞬かせれば再び軽いキスが下りてくる。
「消毒し忘れたとこあったなと思って」
すっかりと頭から消え失せていたが、そういえば男に唇を寄せられたんだと思い出す。
「悪い……思い出させたか?」
睦月はフルフルと首を横に振った。
「もう、平気。でも……また、思い出したら抱いてくれますか?」
広い胸に擦り寄ると、愛おしげに髪を撫でられた。
「思い出してなくても、抱かせろよ」
陽の言葉にふふっと笑いが溢れる。今更クゥッと小さくお腹が鳴った。
「今日飯食ってねえもんな」
確かに空腹は感じていたが、強烈な怠さと鉛のように重くなった瞼が、睦月を眠りの淵に誘っていた。
髪を撫でる陽の手が優しくて、泣きそうなほどに幸せだ。
「愛してる」
夢の中で聞こえた呟きに、睦月は微笑みを返す。
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