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Ju te Veux:02:四年に一度のホワイトデー
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今年のバレンタインデーは日曜日だった。いつもなら、バレンタインが日曜ならホワイトデーも日曜だが、今年は4年に1度の閏年なので、1日ずれて月曜になる。
今日は4年に1度のホワイトデー。
なんとなく、瀬川はそんな風に頭の中で関連づけた。
「うん。今年のホワイトデーはいつもよりほんの少しだけ、特別なんだよな」
「ん?何か言いましたか?」
同じ営業企画部の同僚に声をかけられて、瀬川は慌てて首を振った。
瀬川が企画して湯島が開発した「クラフトに使えるボンド」は、順調に業績を伸ばしている。その後に出したボンドに着色できるネームマーカーは、当初の予想に反して、本来のネームマーカーとしての評判の方が良い。売り上げ的には目標曲線を外れていないが、クラフトに利用するユーザーが思ったより少ないようで、今後もイベントや書籍、ネット動画などでアピールを続ける必要があるだろう。
今瀬川が湯島にせっついているのは、ボンドで作成したモチーフに、シリコン素材をガッツリ貼り付けられるボンドの開発だ。シリコン素材の接着はどうしても難しい。2液混合ボンドにせざるを得ないが、低年齢層のユーザーは、そもそもそういう面倒を嫌ってレジンではなくボンドを使ってくれているのだ。その点を考えれば、できるだけ手間を省いたボンドの開発を急ぎたい。
「う~ん、ボンドじゃなくて、容器の方に仕掛けがいるのかな~」
ゴールデンウィークに開催されるデザインフェスのための準備をしながらも、瀬川の頭は新しいボンドのことでいっぱいだ。
「瀬川君、今度のフェスの講師から、デザイン案来てるんだろ?見積もり早く出してくれよ」
「あ、すいません」
瀬川は慌てて頭をデザインフェスに切り換えた。
今日Satin Dollにに行くのは少しだけ遅くなるかなぁと独りごちながら。
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