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Ju te Veux:04-3:シャンパン

 気がつくと、湯島の指が瀬川の髪を撫で、うなじをくすぐり、背中を行き来している。音楽はかかっていないけれど、部屋の中にはなんだか甘やかな雰囲気が充ちていた。 「瀬川さん……、今日、もう1つプレゼントをもらっても良いですか……?」 「だから湯島君、ちょっと言葉選びが恥ずかしいって……」 「ごめんなさい。気の効いたことを考える余裕があまりなくて……」  湯島の唇が瀬川の髪の間に挿し込まれ、こめかみの少し上の当たりにキスをされる。たったそれだけのことにゾクゾクするのは、多分、この部屋の雰囲気に酔っているからだ。  瀬川は自分の頬や髪や額にキスをする男の顔を指先で捕らえて、そっと唇にキスをした。 「俺も、今日はそうかなって思って、1度家に帰ってスーツ替えてきたんだ。替えのシャツも持ってきた」 「え?あ、ごめんなさい。今日は職場でお会いしなかったから、気がつきませんでした」 「うん。気がついてたらちょっと怖いよ。ストーカーか超能力者かと思うじゃん?」  もう1度唇にキスをして、笑いながら唇を離そうとしたら、すぐに湯島の唇が追いかけてきた。 「ん…っ」  何度も啄まれ、すぐにキスが深くなる。  湯島のキスは、いつも瀬川をうっとりとさせる。彼のピアノのように、自分を月まで連れて行ってくれるキスだ。  やっと唇が離れると、湯島は瀬川を力一杯抱きしめて、耳元で掠れた声で囁いた。 「今すぐベッドに連れて行っても良いですか……?」 「いや、シャワー浴びたい」 「僕の方にはそんな余裕はないです」  言葉に反して、湯島の声は甘く、余裕があるようにしか聞こえない。それでも湯島の腕は瀬川を離すまいと、きつく瀬川の腰に絡みついている。 「そんな風には見えないぞ」 「結構いっぱいいっぱいなんです。若造ですから」 「1つしか違わないだろ。ほら、どいてくれ。俺家まで往復してるから、汗かいてると思うし」  瀬川が湯島の腕を振りほどこうとすると、湯島はよけいに手にこもる力を強くする。 「じゃあ一緒に入りましょう」 「初心者相手にそんな高度な要求をするな」 「でも!」  なおも言い募ろうとする湯島の顔の前に、瀬川はニュッと手を突き出した。 「湯島君!ステイ!」  その短いコマンドに、湯島が思わずビタリと固まる。 「グッボーイ、湯島君」 「僕は犬じゃありません」  不満そうに、それでも湯島はやっと瀬川の腰を抱く手から力を抜いた。下唇が微かに尖っている。……なんというか、これは……思いの外、可愛い。 「あははは、うん。じゃあシャワー浴びてくるから、良い子で待ってろよ」  クシャクシャと頭を撫でてから瀬川が浴室に向かって歩き出すと、すっかり犬扱いされた湯島が、男前の顔をしょんぼりさせながら、「はぁい」と小さくうなだれた。   ◇◇◇ ◇◇◇

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