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【中編】雨は優しい音色で囁いた

雨のような気がする。 でも、雨じゃない。 これがもしも雨なら、とても暖かい。 空は、温もりに満ちた雨を落とすのかな? 優しい音色が聞こえるよ…… 「わっ」 なんで? なんで?なんで? 「アルルンがァァァー!!」 「目を覚ましてしまったのか、オメガ」 こんなにも間近に。吐息の触れる距離にあなたがいる。 雨だと思っていたのは…… 「やんっ」 チュプ 濡れた舌だ。 どうして?どうして? 「愛する者の名前を忘れたのか?困った人だな」 プルプルプル 首を振るだけで精いっぱい。 だってあなたは、ずっとずっとずーっと。 会いたくて、会いたくて、焦がれていた。 (夢じゃないよね) 「すまないな、一人にして。オメガは私にこんなにも会いたかったのか」 ひどい。……ていうのが正解なの? それとも、会いに来てくれてありがとう。……が正解。 分からなくて呼んだ。 「アルルン」 あなたの名前。愛しさが込み上げる。胸があったかい。 「思い出してくれたね」 悪戯っぽくあなたの吐息が笑った。 「なんで会いたいって分かったの」 「お前が大切に握ってるのは、私だよ」 「あっ……」 アルルン人形 南の島に行くあなたにせがんで、毛を分けてもらったんだ。 アルルンのぬいぐるみ作るために。 あの時はΩの巣作りが始まった……って。大騒ぎになったね。 クスリと笑みが込み上げた。 「あのね、アルルンがもう一人になったんだよ」 余った毛で編んだ、もう一人の小さなアルルンぬいぐるみ。 おっきなアルルンと、ちっちゃなアルルン。 親子みたいだね。 「あのね!」 胸の奥がぎゅうっと…… 「このアルルンっ」 苦しくなった。でも言わなきゃ。言わないと。 「アルルンの産まれてくるこどもにあげてっ!」 ぎゅうううゥゥうー なんでっ?どうしてっ? 俺の体、どうなった? (なんでアルルンに抱きしめられているんだァァー??) 「子を身籠ったんだね、オメガ!」 「えええーッ!」 なんでそうなる? 「お前がそう言ったんだ。産まれてくる子に、アルルンぬいぐるみをあげて……と」 「えええーッ!」 俺はっ 「南の島の奥様とアルルンの子に」 「誰だ?それは?」 ……………… ……………… 「………………」 「………………」 「私の妻はお前だけだぞ、オメガ」 「え」 でも、だけどっ 「南の島にベッドが!クイーンサイズが届いたって」 「あぁ」 大仰な溜め息を一つ、アルルンがついた。 「一大事だとスザクが言うから戻ってきたのだが。 私は体が大きいからキングサイズを所望したが、オメガは小さいから、二人で寝るのはクイーンサイズでも問題ないだろう」 ………スパダリの思考についていけない。 「どうした?私達の新婚旅行にベッドがなくては不便だろう」 「えええええーッ」

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