「しょうがねーな。　挿れてやるから来い」 「えっ、待って待って待って！　俺の血吸わないで！」 「吸うんじゃなくて挿れるっつったんだよ」 「それもヤダ！！」 　吸血鬼は力ずくだった。 　ベッドに片膝を乗り上げ、由宇の抵抗を軽々とあしらってふわふわブルマをずり下げ、ローションの蓋を取る。 「……尻尾あった方が可愛いけどな」 「えっ……か、可愛い……？　先生、いま可愛いって言った？」 「尻尾があればな」 「付ける！！　尻尾付けるよ！　俺頑張る！」 「付けるんじゃなくて挿れるんだけど。　まぁいいか」 　由宇の恋人はそれらしい事を滅多に言ってくれないので、過剰に反応し従ってしまうのは悲しい性だった。 　一人では無理だけれど、恋人によく似た吸血鬼が気持ちよさを交えて手伝ってくれるならば出来る。 　せっかく、このどこも守ってくれなさそうな破廉恥としか言いようのない衣装を、羞恥心を振り切って着てみたのだ。 　何としてでも、「可愛い」と言ってもらいたい。 　早速手伝ってくれそうな吸血鬼が、由宇の両足をガバッと開いた。　ちなみにふわふわブルマは左の太ももに引っ掛かっている。 「ふ、ぁ……っ」 「あー、一応慣らそうとはしたのか」 「……う、うん……」 「濡れてる」 「うん、……って、もう言うなよーっ！　恥ずかしいんだから！」 「指は？　挿れてみた？」 「……先っぽだけ……」 　橘に宿題として後孔拡張を課された事があったが、あの時も由宇は挫折した。 　ローションで自身の指先を濡らし、孔にまで持っていくがそれだけで涙が出てくる。 　今日もほぼ同じような状態で、泣きながら人差し指の第一関節まで挿れてはみたが、くぷっという生々しい音に自分で驚き、それ以上は進めなかった。 　由宇一人では、とても出来ない。 　縋るように恋人を見上げるも、彼はやはり魔界の住人であった。 「やってみ」 「え！？　や、やってみって、そんな……っ」 「やれ」 「う！？　で、でも……っ」 「今日のノルマ。　自分で二本入るまで解さねーと、俺の巨砲はおあずけ」 「えぇぇぇっっ！？　って、いいよ、それでいい！　おあずけでいい！」 「あぁ？」 「わぁぁん！　その衣装で睨むのはやめてー！」 「お前が笑える事言うからだろ。　あー爆笑」 「わ、笑ってないよ！？　先生少しも表情変わってないよ！？」 「腹ン中で大笑いしてる。　こいつ何言ってんのって」 「〜〜〜〜っっ！？　キィィッッ！」 　バカにされている。 　自分で解して尻尾を装置しなかっただけで、ここまで貶されて悔しくないわけがない。 　このような由宇の奇声は何日かに一度、橘家を揺らす。 「あーうるせ。　奇声上げるヒマあったら指挿れろ。　痛くねーから」 「……でも……っ、それはいっつも先生が……っ」 「俺が何？」 「あ、いや、……その……」 「ポメ、お前には一択しかねーんだよ」 「なっ……！」 「つべこべ言わずにやれ」 「うーーっっ」 　性的な事柄においては往々にして、恋人の優しさが半減する。 　彼がとても見た目通りのサドなお方で、身体を噛まれると興奮するマゾの気を持った由宇とは相性がピッタリなので、その辺は大きな問題ではない。 　一人では解せない。　指など挿れられない。 　しかも牙アリの吸血鬼が目を凝らしている前でなど、振り切った羞恥心があっという間に戻ってきてしまう。