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第7話※
旭陽が電気を消すと二人は二組に別れた布団にそれぞれ入る。
シオンは暗闇の中、隣にいる旭陽を見つめた。
旭陽の肌が恋しいと思った。
アパートにいた2日間は布団が一つしかなく、必然的に旭陽と同じベットで、旭陽は終始シオンを胸に抱いて眠っていた。
シオンの性格上、素直に一緒に寝たい、などど言えなかった。
小さく溜息を吐くと、シオン……、と旭陽に呼ばれた。
暗闇の中、目を凝らすと旭陽が布団をめくっていた。
「おいで」
そう言われ、シオンは躊躇う事無く旭陽の布団に潜り込んだ。
抱きすくめられると、途端安心感がシオンの中に生まれる。
背中を撫でられると、もっと触って欲しい衝動に駆られる。
「もっと……撫でてよ……」
「えー?変な事したくなっちゃうからなぁ」
「してよ……その変な事」
シオンは堪らず、旭陽にキスをした。
暗闇の中で、旭陽が目を丸くしているのが分かった。
口元が緩んだように見えた。旭陽はシオンを組み敷き、頬を撫でるとシオンの唇を塞いだ。
舌が歯列を割って入り、口内で旭陽の舌がシオンの舌を捉え、シオンは夢中でその舌を絡めた。無意識にシオンは腕を旭陽の首に絡めた。
クチュクチュ……と水音が響き、あまりの気持ち良さに、シオンの腰がズクズクと疼いた。
(キスってこんなに気持ちいいんだ……)
シオンは体を売っていた時、キスはしなかった。
旭陽を初めて会ったあの日、何となく旭陽の纏う雰囲気が好きだと思い、あの時初めて仕事でキスを仕掛けたのだ。
「んっ……はぁ……」
浴衣の裾から旭陽の右手が太ももを撫でている。
「あっ……」
思わず声が漏れると、旭陽の手はシオンの胸の中心を摘み、もう片方の胸は吸われては甘噛みをされてた。
「あっ……あ……!んっ……」
ゾワゾワと快感がシオンの体を貫く。
チュッチュッとわざと音を立てられ、首筋や胸にキスをされる。
「俺、未成年の少年に、いけない事してるおっさんの気持ちになってる」
そんな色気のない事を言った旭陽に、シオンは思わず旭陽の肩を叩いた。
「あ、痛っ……!」
睨まれていると分かったのか、ごめん、ごめん、
と反省の感じられない謝罪を口にされた。
シオンの中心はすっかり勃ち上がり、下着が邪魔に感じた。そう思った瞬間、旭陽の手が下着にかかると勢いよく脱がされた。
「すっかり硬くなってるな……」
そう耳元で囁かれ、ゾクゾクとシオンの体が小さく震えた。
「はぁ……あっ、あっ……!」
ゆるゆるとシオンの中心を扱かれ、すぐ達しそうなり、旭陽の浴衣をぎゅっと掴んだ。
「キス……して……」
シオンは強請る目を旭陽に向けた。
「ん」
旭陽は望み通りシオンの唇を塞いでやる。その瞬間、シオンの体が大きく跳ね、旭陽の手に吐精した。
「あ……んっ……ん……」
シオンの体はビクビクとヒクついている。
「気持ち良かったか?」
旭陽の言葉に、自分は余程気持ち良さそうにしていたのかと思うと恥ずかしくなり、思わず顔を背けてしまった。
本当は挿れて欲しい。だが、旭陽は不能でそれは叶わない。
旭陽は枕元のティッシュを何枚か取り、手を拭いているようだった。
(足りない……)
シオンは旭陽に跨ると、再びキスを仕掛けた。
「どうした?まだ、足りないのか?」
揶揄うような声が聞こえ、その言葉を吸い取るように何度も啄むキスを繰り返した。首筋に唇を這わせ、キツく吸った。
浴場で見た時、見事に割れた腹筋と均整の取れた
しなやかな体躯に男の色気を感じた。着痩せするタイプなのだろう、服を着ている時はヒョロヒョロとした風に見えるが、ずっと殺し屋として生業にしてきただけあり、相当な訓練を積んできたである事が逞しい体が物語っていた。
「あは、キスマーク付けてんのか?」
「黙って」
胸元にも吸い付き、デコボコとした傷跡に唇を当て、舌で舐め上げた。
「くすぐってーよ」
チュッチュッと音を立て、傷跡にキスを繰り返す。勃たないとわかってはいたが、旭陽の股間に顔を埋めた。
「シオン……いいよ、そんな事しなくても。勃たないから……」
そう言って頭を撫でられた。
旭陽の中心を口に含んでみるが、硬くなる事はなかった。
(本当にインポなんだ、この人……)
本当は自分に反応しないだけなのでは?とも思った。
「勃たないんだね、本当に」
「だから言ってるでしょ、インポだって」
「根っから男がダメな人なんじゃないの?」
「ダメって事はないだろうけど……」
おいで、そう言って両手を広げ大人しくシオンは旭陽の胸に収まる。
「俺はゲイじゃないけど、男とするならお前がいいよ。インポ治ったら、相手してくれ」
「格安で相手したあげるよ」
「ええー、お金取るの?」
少ししょんぼりした可愛らしい声がして、シオンから思わずクスリと笑いが洩れた。
(いつか抱いてほしいよ、あんたに……)
そんな事はシオンの口から恥ずかしくて言えるはずもなかく、その変わりシオンは旭陽をぎゅっと抱きしめた。
次の日、近くの水族館に行くとシオンは終始、上機嫌だった。感情はあまり表に出る事はなかったが、ここ数日の中でなんとなく感情を読み取れるようになっていた。
いつも素っ気なくするのは、おそらく人とこんなに接する機会もなかった為、慣れない事への照れなのだろう。だが、比較的旭陽の言う事には大人しく聞き、素直な部分もある。一方で少しでも一人にすると不安になるのか、まるで雛鳥のように旭陽に着いて回った。
もう一つ足せば、シオンは生き物が好きらしかった。水族館で、イルカのショーを見ているシオンの目は、キラキラとし年相応の子供に見え、可愛らしいと旭陽は思った。
(ホント、可愛くてしょうがない)
そう心の中で呟くと、隣にいるイルカのショーを見つめているシオンの頭を撫でた。
ふと、いつか猫か犬でも飼って、シオンと二人、穏やかに暮らせる日が来れば幸せだろうな、そんな思いが浮かんだ。
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