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序章 松

「織田信長が討たれた!!」 「あの暴君が討たれたぞ!!」 「これで私たちが殺される心配がなくなったのね!!」 「信長を討ったのは誰だ?」 「明智光秀様だ」 「明智様?彼は信長の部下ではなかったのか?」 「謀反を起こしたようだ」 「怖や怖や」 「しかし、明智様には感謝せねばな。あの暴君を討ってくれたのだから」 「だが、信長が死んだとなると、蘭丸様はどうなったのだ?」 「蘭丸様も亡くなられたようだ……」 「まだ若いのにお可哀想に……。あのような主人にさえ仕えなければ……」 史録によると天正10年6月2日。織田信長は部下である明智光秀の謀反により本能寺で息絶えた。彼の小姓である森蘭丸も主人と共にこの世を去ったという。 暴君であった織田信長を討った明智光秀は人々から英雄と賞賛されたが、織田信長の腹心の部下である豊臣秀吉の手によってこの世を去ることとなった。 本能寺の変から3日後のことであった。 しかし、これは史録上に残されている話である。 事実は違った。 あの日。 本能寺の変が起きた日。 明智光秀が本能寺で討ったのは、織田信長ではなかった。 いや、織田信長であったが、本当は織田信長という名の人物ではなかったのだ。 明智光秀が本能寺で標的として討ったのは… 森蘭丸 であった。 そして、この森蘭丸こそあの悪名高い織田信長本人であった。 森蘭丸と織田信長は同一人物であったのだ。 何故、森蘭丸は織田信長と名乗っていたのか。 何故、森蘭丸は明智光秀に討たれないといけなかったのか。 それは後々わかっていくこととなる。

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