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第5話
穏やかな鳥の音色が遠くから聞こえて来る。働かない頭で、鳥の種類を考えるが、自分に分かるはずもなかった。
そして、鳥の音色よりももっと身近に、人の気配がする。大勢で忙しなく動いているようだ。
重たい目蓋を開けようとするが、なかなか開かない。やっとのことで見えた景色は薄汚れた天井だった。
周りを見渡したくて身動ぐが、鈍い痛みに呻いただけで動くことは出来なかった。
「おや、目が覚めたかい?」
俺の呻き声に反応したのか、白い服を着た人が声をかけてきた。目線だけをそちらに向けると、柔らかい微笑みを称えた眼鏡の奥の瞳がこちらを見下ろしている。
「君、名前は?痛いところは?喋れる?」
矢継ぎ早に質問してくるが、どれにも答えずに、じっと相手の瞳を見つめる。俺の周りには、珍しい色の瞳だった。爽やかに晴れた空よりもずっと輝いているブルーの瞳。
「…きれい」
「え?君は寝起きにとんでもない事を言うんだねぇ」
ポロリと溢れた言葉に、相手は苦笑いして頭を掻いた。
それからゆっくりと視線を周りに巡らす。たくさんのベッドの上には横たわったり、座ったりしているたくさんの人。皆どこかしらに白い包帯を巻き付けている。そして、ベッドの間を縫うように白い服を着た人たちが忙しそうに動き回っていた。
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