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第9話 sideブラウ

ディットが吐き出した紫煙を見つめるともなしに見ていると、チラッとこちらを見た彼と目が合う。 とてもめんどくさそうな顔をした彼は、投げやりにも答えてくれた。 「…じゃ、色の名前でいいだろ。お前はブルー、俺はゴールドからとられた名前なんだから」 彼の提案はとてもいい案だった。 確かに、僕はオランダ語で青色を意味するブラウっていう名前だし、ディットはドイツ語で金髪を意味するディーウィットという名前だ。 偶然とはいえ、色から名前を取られた者同士、最初は親近感を覚えたのを思い出す。 「いい案だね!じゃ、彼の名前は何がいいと思う?」 「…知らねーよ。なんか特徴ないのか」 彼の特徴…褐色の肌、贅肉のない栄養失調気味の体、貧血気味、ルビーの瞳。 「あっ!特徴あったよ!ルビーの瞳だ」 興奮で大きな声を出すと、ディットは肩を跳ねさせてこちらを睨んできた。 苦笑いをしながら、謝ると、彼はまた紫煙を燻らせる。 「ルビーだったら、こっちの言葉でアフマルだな」 意外に言語に詳しい彼はさらっと返してきた。 僕は、基本的な会話しか話せないが、彼は殊の外勉強熱心らしい。 「アフマルか。アフマル、アフマル、アル。アルって名前はどうかな?」 ルビーの瞳を持つ彼は、その瞳からアル。とてもしっくりきた。 僕の相談に乗っていた彼は小さく頷くと、満足そうに煙草の火をもみ消した。

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