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第10話
熱い。近くで家が燃えている。肉の焼ける焦げくさい臭いもする。高いのに重みのある銃の音。泣き叫ぶ女の声。殺してと喚く誰か。
―コロシテ、コロシテ、コロシテ、コロセ、コロセ
「…ぃ、お……、て…し……、起きて!!」
はっと目を覚ます。全身汗まみれで、動悸が止まらない。息も絶え絶えに視線を巡らすと、先程と変わらない薄汚れた天井と、青い瞳が映った。
「大丈夫かい?酷くうなされてたから起こしちゃったよ」
心配そうに覗き込むブラウに一つ頷いてから再び目を閉じて、呼吸を落ち着かせる。
ここは戦場じゃないんだ、落ち着けと言い聞かせて深呼吸をする。
徐々に呼吸が落ち着いてきたので、また目を開ける。
柔らかく微笑んだブラウにまた一つ頷き返す。
「もう、大丈夫そうだね。ちょっと検査をさせてね。…うん、大丈夫ではないけど、変化はないから問題なしっと」
さらさらと手元にあった紙に何かを書き込んでいるのをぼーっと見つめる。
夢なんて見たのはいつぶりだろうか。まだ、耳元で誰かが叫んでいる気がする。
「君にいい報告があるんだ!」
弾んだ声で言うブラウを見ると、満面の笑みであどけなく笑っている。
「君の名前を考えてみたんだ。君のこれからの名前は、アル。アフマルから取って、アルってどうかな?同僚のディットって人と考えたんだけど。」
アフマル、赤、アル。
とても似合いだと、他人事のように思った。赤からは逃げられない。
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