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第12話
俺の横で、大きく呼吸をしてるのに合わせようとするが、全くうまくいかない。
どんどん襟をつかむ手に力が入る。
もう、どうやって呼吸していたのかが、全く思い出せない。
すると、口元を何かで覆われた。
目をやると、横の人の手だった。
その状態で、しばらく吐いたり、吸ったりを繰り返していると、不思議と呼吸が楽になってきた。
口元の手を外され、背中を叩くリズムと同じリズムで呼吸を繰り返すようになったころにはもう、息苦しさはなくなっていた。
「落ち着いたか?」
低い声で問いかけられて、小さく頷く。
体中がだるくて、力が入らない。
だるく顔を上げると、先ほど見た緑の瞳とぶつかった。大地の色だった。
ふと、強く握りしめていた手を離すと、皺になっていた。
「…しわ」
「ん?あぁ、今更皺なんか気にしない。毎日しわくちゃだしな」
口端だけで笑うと、俺を横にした。
ベッドに沈み込むと、体中の力が抜けて、ピクリとも動けないような気がした。
「…どうして、息できなくなったの」
「あれは、まぁ、過呼吸だろうな。呼吸は出来てるはずなのに、体が勘違いしてなるもんなんだよ。酸素吸えてるのに、吸えてないと錯覚して、吸いすぎてんの。だったら、吸えなくしてやれば吸いすぎることもないだろ?」
そう言ってまた、口端だけ上げて笑った。
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