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第13話

そう言えば、この人は誰なんだろう。 白衣を着ているから、医者ということは分かる。 この一週間では、初めて出会った人だった。 俺の考えていたことが分かったように、その人は俺につながれた機械や手首を触りながら「ディット」と名乗った。 一通り調べ終えたディットは、ベットに座り込んだ。 「んで、なんで呼吸できなくなったんだ?」 低く響く声は何故か安心する。その声に誘われるように瞼を閉じて、数刻前のことを思い出す。 「雨の音を聞いてた。そしたらその音が、違う音に聞こえた。その内、訳が分からなくなって、息ができなくなってた」 「違う音って?」 さらりと、頭を撫でられる。初めてされたその行為は、何故か懐かしい感じがした。 「…人の走る音、銃、戦車、唸り声」 撫でられる手が気持ちよくて、ずっとしていてほしいと思った。 「そうか。ちょっと寝ろ。疲れただろ」 その声に従うように、だんだんと意識が沈んでいく。ふと、煙草の香りに気づく。 決していい匂いではなかったが、どこか落ち着く。 外の雨音は、一向に止む気配はなかったが、さっきのように不安になる事はなかった。 今はただ、撫でられる手の温かさにただひたすらすがっていたかった。 「おやすみ」 その低い声が合図だったかのように、一気に意識を手放した。

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