14 / 40

第14話 sideディット

「おつかれ。アルには会えたかい?」 過呼吸を起こしたアルを寝かせた後、休憩室に戻るために廊下を歩いていると、向こうからやってきたブラウに声をかけられた。 「あぁ。あいつ過呼吸起こしてたぞ。ありゃPTSDだな」 無理もない。少年兵らしいアイツは、幼いころから戦場を生き場所としていたのだろう。それが、幸か不幸か戦場から離れたこの病院へ運ばれてきた。 アイツと一緒にいた少年たちは、運ばれる間もなかったらしい。そんな子が、静かな場所で生きられるのか。 「そうだよね。それに、アルには伝えなきゃならないこともあるし。彼は、これから生きていけると思うかい?」 「そんなの分からん」 こんな戦場に近い病院で働いていれば、惨い患者はいくらでも見てきた。なんなら、ここよりもっと戦場に近い野戦病院でだって救護活動をしたこともある。そこで見た患者は、そのまま息絶えるか、戦場に戻って生死も分からないやつばっかだった。 きっと、アイツもそうなるのかもしれない。それが少し、心苦しかった。 窓から見た外は、土砂降りの雨で、蒸し暑さに支配されたこの空気に、自分の心までも淀んでしまいそうだった。 「あのルビーの瞳が、陽の下で輝く姿を見てみたいな」 横に並んだブラウがそう呟いたのに、頷くしかできなかった。 その願いが叶えばと、柄にもなく願ってしまったのだ。

ともだちにシェアしよう!