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第16話

何を言っているのか分からない。 左足の膝から下がない?こんなに熱を伝えてくるのに?今はまだ感覚が鈍いだけで、また訓練をすれば、走れる気がしているのに? ない?ない?何がないって?ナイ?膝から下が? 「ここに運ばれて来たときには、ほぼ無くなってた。そこからの出血が酷かったから、ぶら下がってた所を切って縫合した。だから、熱を感じる事は無いんだ。もう化膿することもない。切断面は、落ち着いているよ」 分からない。何を言っているのか分からない。 確認したくて、上体を起こし、布団に手をかけるが、そこから動けない。 目線の先の布団は、右側だけが膨らんでいた。 「急にこんなこと言われてショックだろうが、立てないわけじゃない。リハビリして、杖を使えば、歩けるようにもなる。だから、気を落とすなよ」 どうすれば?戦場に戻らなきゃいけないのに?足がないなら、どうやって走ればいいんだ?あの銃弾と火の粉が舞う血の海を、どうやって生きていく? いや、コイツは嘘を言っているんだ!ただ、膨らんでいないだけだろ?コイツも敵と同じなんだ!足はあるのに、ないって嘘を吐いてる!見てみればいいんだ。布団を捲って、足があることを確認したら、コイツを殴って、こんな所出てってやる。それで、あそこに戻って、金髪を嬲り殺してやる。捲れ。捲ればいいんだ。 一度目を閉じて、震える手で布団を勢いよく捲る。酷く喉が渇いているのを、唾を飲み込んで潤す。そして、意を決め、目を開けた。 「…っ!ああ、あ…あああああああああああああああああああ」 そこには、白いシーツだけが、陽の光を反射していた。

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