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第17話 sideディット

こういう時、自分は無力だとつくづく思い知らされる。 目の前で、無くなった足を受け入れることもできずに、ただ声を上げて呆然とする子供を助けてやることもできない。 もともと、何か志があって医者になったわけじゃない。 裕福ではないが、食うに困ったこともない、普通の家庭で育った。勉強は好きだったので、何か安定した職に就きたいと考えた時に、自然と医大に入っていた。そこそこな成績で卒業した後、まぁまぁな病院で勤務し、経験を積んだ。そして、その病院でこの活動を知った。自分よりベテランの医者が、経験者だった。とても腕の良い医者で、その人の元で学べる事に喜びを感じていた。 その人が言っていたのだ。 「医者にできる事はほんの少ししかない」と。 よく話を聞けば、海外の戦地で救護活動をしていたそうだ。その惨たらしい戦地に恐れ、絶望し、逃げ帰ってきたと。 正直に言えば、恐いもの見たさもあった。それに、自分なら、全員とは言わなくても何人かなら助けられるのではないかという驕りもあった。ただ、どこまでやれるのかを試してみたくなったのだ。 そうして、その人のツテでそういう活動をしている団体に登録した。嫌になればいつでも帰って来ればいいという軽い気持ちだったと思う。

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