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第20話

暗闇の中で、赤い光が舞っていた。 ここはどこだろうか。辺りは真っ暗で、何も見えない。ただ、自分の視界をチラつく赤い光が邪魔だった。 少し歩いてみたくなって、足を動かす。前後も上下も分からない闇の中を、呆然と歩いていた。ただただ、闇が広がっていた。 どれくらいそうして、歩いていたかは分からないが、急に左足が痛くなって、転んでしまった。痛みの元凶を確かめようと、上半身を動かして、足を見る。 無かった。さっきまで歩いていたはずの足が、確かに立ち上がっていたはずの足が、闇だけを残して、無くなっていた。 ――ゴォッ 呆然と闇を見つめていると、突然、熱風が体を襲う。その熱さに、這いつくばって、捻っていた上体を前に向けると、先ほどまでの闇はそこにはなく、戦場が広がっていた。 走り回る人々、降り注ぐ銃弾、全てを焼き尽くす炎。それは、少し前まで、自分が居た場所だった。 そして、視線の少し先に、いつかに見たことがある少年が蹲っていた。 「殺して。殺して。殺して。殺した。殺した。殺した。殺した。」 始めは聞き取りずらかった、彼の声が、だんだん鮮明に聞こえてくる。悍ましい声でそう呟く彼に、手を伸ばす。 お前が望んだんだろ?だから俺は… あと少しで、手が届くという時に、彼がばっとこちらを振り向いて、感情の抜け落ちた、何も読めない声で呟いた。 「お前が殺したんだ。ほら、体の下を見てごらん。」

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