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第22話
「っ!あぁっ!」
飛び起きると、もう見慣れた病室だった。薄い明りの中で、まだ眠っている人たちが見える。荒い息を落ち着かせようと、胸元に手を当てると、震えていた。
「…夢だった…」
無性に痛くて、足を見るが、やはり、右側だけしか膨らんでいなかった。
瞼を閉じると、あの赤い瞳が責め立てる様に、こちらを見つめている。それが怖くてどうしようもなかった。
俺が殺した。そうだ。俺が殺したんだ。みんな。
震える手で、左足の膝あたりの布団を掴む。
俺が殺したんだ。だから、この足も、無くなったんだ。次は、俺の番ってことなんだろう。
耳鳴りのように、先ほどの声が響いてる。
力が抜けて、ベットに横になり、手を目もとに持ってくる。窓から漏れる薄明かりに照らされた俺の手は、真っ赤だった。鮮明でいて、どす黒い赤だった。
みんなが許してはくれない。平穏な場所で、足を失くしたくらいで、泣き叫んでいるような俺を、みんなが許してはくれない。戻らなければ。戦場に。次は俺の番なのだから。
「…アフマル。」
この赤色からは逃げられない。全て自分がやってきたことなのだから。この戦争の意味も、生きる意味も、死ぬ意味も、何も分からない。
それでも、彼らを殺したという事実だけは分かる。その事実だけがあれば、戦場に戻る理由は、他に何もいらない。
ふと、最後に見た、ディットの顔が頭に浮かんだ。彼はまだ、死んでいない。殺したくない。ただ、あの光のような金色の髪と、大地の色の瞳を無性に見ていたくなった。
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