23 / 40
第23話
結局、その後は寝れずに朝を迎えた。暗闇の中で、静寂を保っていた人たちが、また忙しなく動き出す。
その人の流れを、何を思うでも無く、ただ見つめていた。
「おはよう。少し顔色が悪いな。」
気怠そうな顔をした、ディットがベッドの横に立ち話しかけてきた。
彼の方を見る。やはり、大地の色をして、金色の髪が朝日を受けて輝いていた。
「…きれい。」
「ん?何がだ?」
「髪も、瞳も」
そう返すと、少し照れた様な表情をした彼は、頬を掻いた。
それから、左足をみる。彼は立てると言った。
だから、立たなければならない。
「ねぇ、どうしたら立てる様になる?」
「杖を用意してやるよ。なんなら、簡単な義足も。それで、訓練したら、また立てる様になるさ」
「義足がいい。出来るなら、走れる様になりたい」
そう言って、再び彼の方を見ると、少し怖い顔をしていた。
「立って走れる様になったら、どうするんだ?」
先程よりも、随分と低いトーンで聞いてくる。
答えは決まっていた。それ以外の選択肢なんか、考えられなかった。
「…戻るよ。」
みんなが俺を待ってるから。
更に眉間に皺を寄せたディットは、俺の髪を撫でる。たまにやってくれるこの行動は、心を温かくしてくれて好きだ。
何度も何度も、繰り返し撫でてくれる手に、瞳を閉じた。
ともだちにシェアしよう!