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第24話 sideディット

休憩室に戻ると、ブラウがコーヒーを飲んでいて、俺に気づくと、カップを掲げた。 「お疲れ様。コーヒー飲むかい?」 自分の机に座って、それに頷いて返すと、タバコに火をつけた。 燻る煙を見つめて、先程のアルのことを考える。 昨日の事があって心配だったが、殊の外平気そうで、立ち上がる事を考えてくれた。 しかし、彼の表情から不安を感じたのだ。何か、決意してしまった様な彼に。 目の前に置かれた、コーヒーに礼を言い、一口飲んだ。いつもより、苦い気がした。 「なぁ、ブラウ。杖と簡易的な義足はどこにしまってあったっけ?」 「確か、第二倉庫にあったと思うけど、アルかい?」 また、頷いて返す。そんな気はしていた。生き残った患者の殆どは、そうだった。分かっていた筈なのに、心がどんどん沈んでいく。 「…戦場に戻るんだと。なぁ、ブラウ。他の生き方はねぇのか?」 立ち昇る紫煙は、ゆらゆらと揺れ、消えていってしまう。 「…きっと、彼らには無いんだよ。僕らに出来ることは、体の傷を治してあげるだけ。君がそんなに抱え込む事はないんだ。割り切らないと、今度は僕らが壊れてしまうよ。」 意外だった。普段穏やかで、人当たりの良いブラウは、俺なんかよりよっぽど大人だった。 分かっている。こんな、ひっきりなしに訪れる患者の一人一人に、心を揺らしていては、勤まらない事くらい。それでも、アルの事は、何となく放って置けない自分がいる。あいつみたいな子は、今までも見てきた。しかし、彼には、特別な何かを感じてしまう。

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