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第25話

その日の午後には、ブラウが義足を持ってきてくれた。 それを、嵌めるために布団が捲られ、思いの外簡単に体の一部となった。 「どう?付けてて痛かったり、違和感はある?」 「…痛くはない。」 今まで見てきた自分の足とは違う質感のソレに、少し不安が過った。 こんなもので、俺は立てるのだろうか。 以前のように、走り回ることは出来るのだろうか。 しばらくつけて馴染ませた後に、ブラウに促され、ここに来てから初めて、ベットから降りることになった。 「勢いよく立っちゃだめだよ?ゆっくりと体重を両足にかけるんだ。」 ブラウの指示に従うように、ベットから足を下ろし、ゆっくりと腰を浮かせていく。 接合部分が圧迫されて少し痛むが、そのことは言わなかった。 裸足だった右足は、床のひんやりとした感覚と本来の役目を果たせることに興奮している様な感覚を伝えてくる。 「痛くはない?」 心配げに、いつでも助けられるようにか俺の腰に手を回したブラウがのぞき込んでくる。 質問に頷いて返すと、少し歩くように促された。 「今までとは感覚が違うと思うから、ゆっくりね。焦っちゃだめだよ」 一歩足を踏み出すごとに、接合部分に痛みが走る。硬い素材と己の体重に押しつぶされた足が悲鳴を上げているようだった。 その日は、そのままベットの周りをゆっくりと歩くだけで終わった。 義足を外してもらい、また、ベットに横になる。 「疲れただろうから、今日はゆっくり休むんだよ?明日から、ちゃんとリハビリしていこうね」 そう言って、ブラウは病室からいなくなった。

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