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第26話

少し歩いただけなのに、体が鉛のように重く、どこまでもシーツに沈んでしまいそうだった。 瞼を閉じて、ベットから下ろした足を思い返す。 右足は、床の質感を教えてくれるのに、左足からは何も感じなかった。 ただ、何かが膝から下にくっついているだけの様だった。ただ、無機質を伝えてくる。 接合部の痛みが、足と義足の境をひたすら強調しているようだった。 視界からも、感覚からも、そこにあるのは自分の足ではない事を見せつけられた気がした。 こんな偽物の足で、戦場に戻れるだろうか。 そんなことが、ずっと頭の中をぐるぐるしている。 でも、これしかないのだ。あの戦場に戻るためには。 戻るためには、義足しかない。どうして? 唐突に、疑問が浮かんできた。あそこに戻るだけならば、足が無くとも、這っていけばいい。なのに、義足しか選択肢がなかった。 走り回るには、足がいる。だから、義足がいる。どうして?みんなの後を追うなら、走り回らなくてもいい。なんなら、走り回らない方が、直ぐにみんなの所に行ける。 戦場に戻るだけなら、俺があればいい。俺に何か別のものを付ける必要はない。 でも、義足が必要だ。 どうして? 答えの見つからない疑問のせいで、頭がはち切れそうだった。それに加え、昼間のリハビリで、体も疲れていた。 もう寝てしまおう。そう思って、考えるのを止めた。 意識が途切れる前に思い出したのは、やはり、並んだ義足と右足だった。

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