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第27話
穏やかな風が吹いていた。
今日も、歩行訓練を終え、中庭のようなところで無心に緑を眺めていた。
何度かの訓練で、だいぶ普通に歩くことができるようになっていたが、偽物の足は、何時まで経ってもその重さを訴えかけていた。
あの日浮かんだ疑問も答えが出ることがないまま、頭の中をぐるぐると回っている。
「外は気持ちいいか?」
何かを考えるという事もしないで、椅子に座っていると、聞き慣れた声がした。
「気持ちいいは分からないけど、嫌な感じじゃないよ、ディット」
歩行訓練が始まってからは、一度も顔を見ることがなかったディットは、少し疲れた様子で隣に座った。
お互い、何かを話すこともなく、遠くの緑を眺めている時間がしばらく続いた後、少しふざけた様子でディットが話しかけてきた。
「なぁ、花を植えてみないか?」
「は、な」
俺の言葉に頷いて返すと、一度建物の中に入ったディットは、手にいっぱい何かを抱えて戻ってきた。
「花。植えたことないだろ?近所の人が苗を分けてくれたんだ。やってみないか?」
年上にいたずらを仕掛けようと言っていた誰かのように、口の端だけを上げて笑うと彼に頷き返す。
満足げな表情をしたディットは、どこにしようかと呟きながら庭を眺めていた。
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