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第28話
場所を決めた彼は、俺を抱えて移動する。
正直、気恥ずかしかったが、義足は外してしまっていたので、大人しくした。
「少し、体重増えたか?」
「分からない。暇だからそうかも」
俺の返しに嬉しそうに頷く理由がよく分からなかった。
庭の端に着くと、そのまま地面に下ろされ、手にスコップを握らされた。
ぼーっとそれを眺めていると、腕まくりをしたディットが、地面を掘りだしたので、俺も真似をして、手前を掘る。
そこに生えていた緑たちの根が思いの外硬くて、押し返されそうだった。
「どうして花を植えるの」
「理由はない。ただ、緑だけっていうのもつまらんだろ。人生には彩が大事だしな」
ちょっと良く分からなかったが、とりあえず、黙々と地面を掘ることにした。
どれくらいそうしていたか、目の前の地面はだいぶ穴だらけになってしまった。
今まで、緑が光っていたそこは、茶色になってしまい、くたびれた緑たちがそこに埋もれていた。
それを何だか寂しいと感じた。
「よし、これくらいでいいだろう。ほら、この苗を穴に植えるんだ」
手渡された小さい緑には、それまた小さい蕾がついていた。
お手本だと先に植え始めたディットを見ながら、穴に落とすが丁寧に扱えと怒られてしまった。
丁寧にはよく分からなかったが、ゆっくりとそれらを穴の中に置いていく。
全て植え終わったころには、風が冷たくなっていた。
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