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第30話 sideディット

ずっとここにいれたらいいのにね そう言ったアルは、俺の腕の中で寝息を立て始めてしまった。 ここに運ばれて来た時よりは、幾分か重くなり、肌触りの良くなった髪を繰り返し撫でる。 寝顔はこんなに子供らしいのに、その人生は、俺やそこら辺の大人たちよりも余程、重く辛い経験をしてきた。 そんなこの子供が、可哀そうで愛しく仕方がない。 アルが義足を付ける決断をした後、ブラウに言われ、あまり関わらないようにしていた。 幸いなことに、意識して会いに行こうと思わなければ、山ほどの仕事で暇は潰せる程忙しい。 でも、ふとした時にこの子の様子が気になって仕方なかった。 そんな時、以前治療をした近所のご婦人が苗を持ってきたのだ。 ここは、彩に欠けると言いおいて帰っていった彼女の背中を見つめながら、アルは花を植えたことがあるだろうかと疑問に思った。 正直に言ってしまえば、花を植えて、〝生”というモノに関心を示して、あわよくば、戦場に戻ることを諦めてくれないかという下心があった。 だから、庭で涼む彼を見つけて、チャンスだと思ったのだ。 俺にも、どうしてこんなにこの子に拘るのかよく分からなかった。 苗を植えてるアルは、とても真剣だった。最初はどうしたらいいか分からない様子だったが、少し教えてやると、とても丁寧に、まるで壊れ物でも扱うように苗に触れていた。

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