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第31話 sideブラウ

仕事がひと段落ついたから、休憩室に行こうと歩いていると、看護師が中庭を眺めているのを見つけた。 「何か気になるものでもあるのかい?」 そう聞くと、彼女は中庭の奥を指さす。それに従ってそちらを見ると微笑ましい光景が目に入った。 大の大人と、少年が背中を向けて地面に座り込んでいるではないか。何をしているのか看護師に聞くと、どうやら花を植えているらしい。これまた、可愛らしいというか、随分似合わないことをしているもんだと笑いながら、その場を後にした。 かなり陽が落ちた頃に戻ってきたディットは、白衣を泥だらけにしてくたびれた様子だった。 そんな彼にコーヒーを渡しながら日中の事を聞いてみることにした。 「花を植えたんだって?楽しかったかい?」 コップに口を付けた彼は、一口飲み乾すと、タバコを吸い始めた。 「楽しいか楽しくないで言えば、楽しくはないが、有益な時間ではあったな」 心なしか口角が上がっている彼のなんと素直じゃないこと。そんな所が微笑ましいと思いながら、不安にも駆られる。 こんな場所で仕事をしている我々は、誰か一人に心を揺るがせている暇はないのだ。そして、それが、いざという時に、重たい鎖を結び付けてしまう。 少なくない時間を共にした同僚が、そんな風になってしまうのは見たくはない。

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