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第32話 sideブラウ

そんなことを思いながら、一人眉間に皺を寄せていると、真剣な横顔の彼が、紫煙を燻らせながら、呟くように話し出した。 「なぁ、ブラウ。俺は、この任期が終わったら、本国に帰ろうと思うんだ」 そこまで言った彼は、一度言葉を切ると、上を向き、大きくタバコを吸って煙を天井に吐き出す。そして、零れ落ちる様に、言葉を紡ぎ出した。 「アルが望むなら、アイツを連れて行こうと思う」 あまりの衝撃に、開いた口が塞がらなかった。 ディットが、アルをことさら気にかけているのは知っていたが、まさかそこまでとは。 「アルを連れて帰ってどうするつもりなの?君は、あの子の人生を背負うつもりがあるの?君が思ってゐるほど人間一人を面倒見るって簡単なことではないよ。ましてや、血もつながらない元少年兵の子どもなんて、とても手に負えるはずがない。あの子への同情なら、僕は君の安易な考えには否定させてもらう。そもそも、国籍もないような子どもをどうやって連れて帰るつもりだい?」 衝動的に早口で幕してててしまったが、彼は自嘲気味に笑うだけだった。 「あの子だけを特別視するのは頂けないんじゃないかな。子どもの患者に会うたびに、みんな引き取るつもりかい?」 「俺も、この考えが良くない事だっていうのは分かってる。でも、アイツを平穏な所で生きさせてやりたいんだ。ただそれだけだよ。」 そう答えた彼は、短くなったタバコを灰皿に押し付けると、こちらに向き直り、真剣な顔をした。 「覚悟は出来てる」

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