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第33話 sideブラウ
そんな顔をして、そんな決意に満ちた事を言われたら、もう僕は何も言えなくなってしまう。
決してディットの考えに賛同することは出来ないが、それでも彼がそうしたいと言うのならば、応援するしか道はなかった。
「これだけは、約束してくれない?どんな結果になろうとも、責任を持ち、後悔しないと」
最後の意思確認のつもりで、そう聞くと、口の端を器用に上げた彼は、悪だくみをするような顔で頷いた。
「それで、どうやって通れ帰るつもりなの?」
「これでも、政府に知り合いがいてな。顔は聞く方だ」
全くこの男は、意外な事ばかり言いだすから、困ったものだ。それでも、楽しそうに話す彼は、今まで見たどんな彼よりも生き生きとして見えた。それが少し羨ましいと思ったのは、僕の心の内に秘めておこうと思う。
それから、彼は、今日の出来事を話し始めた。
正直、アルが戦場以外に見つけようとしていることに嬉しさと反面、意外さを感じた。
元々、平穏を知っている兵士ならば、そこに戻りたいというのは分かる。しかし、ずっとそこで生きていた子どもに、そういう感情が生まれることは稀である。
偶然とはいえ、戦地から少し離れたこの病院に運ばれた事は、彼にとって幸いだったのかもしれない。
いつもより饒舌な彼を見つめながら、神に願った。
どうか、ディットとアルに平穏な未来が有らんことを。
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