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第35話
ぎこちない足取りで庭に出る。
小鳥たちが寄り添うように木に留まり、その美しい鳴き声を響かせる。
いつか、彼と共に植えた沢山の花が色鮮やかに咲き誇っていた。
小さいそれらは、柔らかい日差しを受けて輝いている。
「どうしたんだ?」
優しい声に振り返ると、白衣を着た彼が柔らかく微笑んでいた。
美しい金色に、美しい緑。
俺の世界に色を教えてくれた人。
ゆっくりと右手を持ち上げて、こめかみに冷たい塊を付ける。
みんな生きている。
みんな生きていた。
みんな輝いていた。
みんな色を持っている。
あぁ、そうか。
俺はこの景色を見るために。
あなたのその光のように輝く髪を見るために。
その、大地のような深い緑に射抜かれるために。
生きていたいと思ってしまった。
俺の色は…
「ありがとう」
今までで一番心は凪いでいる。
自然と口端が上がった。
「さようなら」
紅。
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