2 / 22

佐倉

(え、マジで)  馬鹿!喜んでんなよ、俺。 『嬉しい?僕に会う回数がそのぶん減らせるもんね。』 …やなやつ。自分が嫌われてるのを十分に自覚している。 「…なにすりゃいいんすか。」  とにかく早くやっつけて、とっとと帰りたい。 『焦らないでよ。ゆっくり楽しみたいんだから。』  ニヤニヤした口調。 「村崎さん…僕、クスリはいらないから、今日はもう、帰っていいですか…。」  佐倉がつぶやくような声で言う。正気かこいつ。クスリが欲しくて来てんだろ? 『じゃあまずは、立花くん、佐倉くんの制服を脱がせてください。』 「村崎さん!」  佐倉はすがるように叫んだ。だがその声は部屋に反響しただけで、村崎は何も言わなくなった。  始まったな。  俺がベッドのうえに乗ると、ベッドはきしんだ音をたてた。  佐倉ははっとして体を起こそうとする。 『肩は、マットにつけておくこと。アイマスクも取っちゃだめだからね。…どうしたの佐倉くん。いい加減、いつもみたいにおりこうにしてよ。』  うんざりしたような村崎の声。  佐倉はアイマスクをしたままテレビのほうを向いて、俺を向いて、そしてあきらめてしまったのか、くちびるを軽く噛んで震えながら静かに天井を向いた。  村崎は淡々としている風だが、内心は怯えきった佐倉の様子に大喜びしてるに違いない。奴はサディストだ。  膝を折ったまま佐倉の制服のネクタイに手をかけると、佐倉はすばやくその手をはらった。 (いてっ)  アイマスクで見えないが、俺をにらんでいるようだ。  確かに嫌だろう。自分のハダカを、村崎だけならまだしも、顔も素性もわからない俺なんかに見られるんだから。自分には何も見えない分、不利でもある。  でも、こうなった以上はあがいてもムダなんだ。 (あきらめろ、佐倉。)  腰を落としてもう一度つかむと、今度はその手を探って俺の手首をつかんでくる。しっとりと暖かな手のひらは、やっぱり細かく震えていた。指先だけが異様に冷たい。  俺に向かって強く首を振る。呼吸が浅い。 (やめてくれ)  そう訴えている。 ――でも、俺は。 「悪い。クスリもらいに来てんだよ、俺。」 (お前だってそうだろ。)  俺がそう言うと、佐倉はまた絶望して、手を下ろし、歯を噛み締めて天井に向き直った。  村崎からの指令内容を再開する。  ネクタイをほどいて、シャツのボタンを、上から順番にゆっくりと外していく。  外しにくいから途中で佐倉の体の上をまたいでかがむと、佐倉は俺の動きに怯えて一度激しくビクッと震えた。そんな自分にムカついたのか、ますます歯をくいしばって悔しそうな顔を見せた。  だんだん、佐倉の肌が見えてくる。  白く小さな胸がわななきながら上下している。  細くて薄い胸。肌は女の子みたいにきれいだ。 (恥ずかしがるようなもんじゃないのに。) …でも、嫌だろう。他人に、こんな形で見られるのは。  上の制服をはだけさせて、下はどうするのかな、と思う。制服を脱がすように言われたけど、下着は言われてない。  だけどあとからまたあの声で指示されるのもシャクなので、佐倉には悪いが一気に全部脱がすことにする。たぶん奴はそう指示する。 「ちょっ…」  俺がベルトを外してすぐにズボンと下着に手をかけたので、佐倉はめちゃくちゃ動揺してまた手をのばしてきた。今度は俺がその手を叩くようにはらう。  佐倉の手は、俺の手荒い強行姿勢に押されたのか、はらわれた先でベッドのシーツの上を軽く跳ねて、そこで怯えてすぐにじっと固く握られたままになってしまった。 「く…」  引き下ろす瞬間、佐倉は屈辱に耐えかねて小さく声をあげ、顔をめいいっぱい横向きに倒した。耳が赤く震えている。  佐倉のために、何も考えないようにする。  下ろしきった服を無造作にまるめて、後ろ向きのまま後方にあるテレビに向かってわざと投げつけるようにほおるが、それはテレビにあたる前にベッドの下に落ちたようだ。  佐倉は軽く膝を曲げて、腕もぐったりと広げたまま、相変わらず横を向いている。  佐倉の髪は後ろのほうが少し長めで、黒いゴムで小さく結んでまとめてあるのがわかった。  か細い足は紺色の靴下だけを履いていて、なんだか、逆にいやらしい。  目のやり場に困って、テレビを振り向こうと頭をひねる途中で、また、あの声。 『はい、よく出来ました。じゃ次は、立花くん、佐倉くんにマッサージして、イかせてあげてみせてください。』 「――イヤだ!!」  佐倉もこの指令は予想していたようで、村崎が言い終わる前に火がついたかのように取り乱し始めた。  はっと佐倉を見ると、腕をバタつかせて起き上がろうとしている。 (させるか!)  勢いが予想以上だったので半ば慌てて、佐倉に覆いかぶさるようにして右手で佐倉の首の根元あたりを押さえ込む。 「ぐ、ぅっ」  佐倉が苦しそうな声をあげたので、またもや焦って力を緩める。 「…もう、たくさんだッ」  佐倉の声は少し裏返って、今度は両手を俺の腕に添えて引っ張ったり持ち上げようとし始めた。 (…。それで全力なのか?)  悪いけど、全然余裕だ。確かに身長は佐倉よりあると思うけど。 (力無いな、こいつ。) 『肩、浮いた?』  妙に嬉しそうな村崎の声。  これ以上あいつを喜ばすなよ佐倉。ますます図に乗ってくるぞ。 「大丈夫っす!」  佐倉を押さえつけたまま言うと、奴はまた嬉しそうにククッ、と笑った。 「村崎さん、制服汚したら悪いんで、こいついったん起こして、上、全部脱がしていいすか。」 『いいよ。』 「やめろ!」 『(クスクスッ)――佐倉くん、もう少しいいコにね。』 …だから、喜ばすなって佐倉。  佐倉に触ると、佐倉は激しく暴れ始めたので、その腕を捕まえて無理やり抱き寄せ、えりの後ろを持って制服を剥がし下ろす。 「い、たっ…」  肩が引っかかったので乱暴に左右に揺さぶると、佐倉の体は簡単に俺にもてあそばれる。  こうしてみると佐倉は高校生のくせにやっぱりチビだ。肩幅も狭い。身長は160無いかもしれない。俺が175cmだから… 「…うっ…や、 いやだっ!」 …ほら。考えごとしてても、余裕。 (なんていってる場合じゃない。)  袖を無理に抜くふりで佐倉の頭を思いきり引き寄せ、耳元でささやく。 ―― イクふりしろ。俺もふりだから。 ---------→つづく

ともだちにシェアしよう!