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逆襲

 瞬間、佐倉が驚いて目を見開き、俺を見た。  俺が佐倉の手首に縄跳び紐を巻きつけ始めたからだ。 「立花くん?」 「きつくないか?」  言いながら縄跳び紐で両手首を繋げて固定する。 「なに…!?」  佐倉はとっさに立ち上がってベッドの上へ逃げようとしたので、紐を引っ張り、その反動でバランスを崩して不安定になった体を、うつ伏せにしてベッドに投げる。 「うあっ…」  跳ねた体がこちらを向く前にヒザで背中を押さえ、紐でさらに首を縛った。 「ぐ…」  背中ごしに抱え上げ、苦しくないように調整した。手首と首の間隔をせばめて、固定する。 「…立ばな…ゥッ」  今度は仰向けにしてほおると、佐倉の頭の上から縄跳びのグリップがぴょこんとのぞいて、その姿はまるで、ピンクの紐で縛られたウサギみたいになった。 「あ。すげー可愛い。」  褒めてあげたのに、佐倉は泣きそうな顔になって俺から目をそらし、必死に紐を引っ張ったり指で結び目を解こうとしたりし始めた。  無理だよ。お前の力じゃ。  ジーンズのポケットに忍ばせていた緑色の錠剤を前歯に挟む。  興味本位で、いろいろ持って帰ってみてて、良かった。  でも、こんなに早く使うことになるとは思わなかった。  しかも、佐倉に。  でも、佐倉が、悪い。  俺を、完全に怒らせてしまった。 (村崎の指令どおり、俺のものになってもらうぞ、佐倉。) …それが望みなんだろ?  佐倉の上にまたがり、倒れこむように佐倉の上に重なる。 「!」  佐倉は怯えて、反射的に目をぎゅっと閉じた。  佐倉の顔を挟み込み、そのくちびるに近づく。  親指の先で口をこじ開けながら前歯に力を入れて錠剤を砕き、そのまま、熱い息を吐く佐倉の口の中へと落とす。 「!?」  佐倉が目を見開く。俺は右手で佐倉の口を覆って力を込めた。 「ん!ンんー!!」  佐倉の体が跳ね上がる。  が、簡単に押さえ込めることを、俺は知っている。 「…!」  佐倉の顔が不快そうに歪む。足が痙攣でもしているかのように暴れ出す。身の危険を感じているから、今度はかなり力強い。 「飲み込め。」 「んん…!」  嫌がってる。当然だ。クスリのマズさは俺だってよく知っている。俺の舌先についたわずかなクスリからすら、しびれるような苦味を感じる。 「命令だ、佐倉。」  佐倉は、反抗するような、あるいはすがりつくような目をして俺を見た。  やがて、白いのどぼとけとあごを何度か上下させ、 ―― ゴクっ  ついにクスリを飲み込んだようだ。  口から手を放してやると横を向いて激しくむせ始めた。吐き出したいんだ。知っているから、このクスリの効能を。 「佐倉。」  佐倉はついに、ベッドから転がり落ちるようにして床に足を着いた。 「―― けほっ、う、ウッ」  俺もベッドから降りて、佐倉を迎えに行く。佐倉は、部屋の出口のドアに向かって、やたらのろのろと、というより、ふらふらと進んでいた。 「佐倉。」  呼んでも来そうにないので、すぐ後ろから、背中にぶら下がった縄跳びのグリップを引っ張る。 「あ、ぐっ」  佐倉はすぐによろけた。背中から抱きかかえる。 「ミルクが無くて、悪いな。あれは持って帰らなかったんだ。」  村崎はこの苦いクスリを飲ませたあとに、いつもイチゴ味の甘ったるいパック牛乳を飲ませる。 「たち、ばなく、ん…」  抱き寄せて、佐倉の目をのぞきこむと、黒目がくるくると回転している。焦点が定まってない。  足もガクガクで、俺に抱えられてなければ立っていられないようだ。  俺はここまではならない。佐倉はクスリが効きやすい体質なのかも。 「…助けて…」  助ける?  助けてやるとも。お前の希望どおりにしてやるよ。 「村崎が望むことが、お前の望むこと、だろ?」  言いながら親指で胸の突起に優しく触ると、佐倉の体は跳ね上がった。 「あ!」  ほら。いい反応。 「やめろ…、っん」  顔を寄せ、キスをする。佐倉はやっぱり舌を噛んだりはしない。さすがに自分から舌を探ってくることはしないけど。 「ふふっ。にが。」  佐倉は、俺を激しくにらみたがってる。眉をひそめ、焦点の定まらない潤んだ黒目で必死に俺をうかがっていて、その顔も、すごく可愛い。 「…俺のキスがやじゃないっていうのは、本当?それとも、俺を喜ばそうとして言ってくれたの?」  佐倉は答えない。ので、またキスをする。やっぱり苦くて、笑いたくなる。 「2人でシェアすれば良かったな。クスリも。」  佐倉の呼吸が辛そうだ。 「…効いてきた?」  耳元でささやくと、佐倉は、は、と息を吐いた。  目がとろりとして、細かく震えてきた。  効いてきた。 「…見る…な…」 「どうする?村崎ならたぶん、自力でイクとこ見たがると思うけど。」  佐倉の両手は首もとで固定されている。 「…っあ…」  佐倉は、体を痙攣させ始めた。 「佐倉、俺にイかせてって頼んでもいいんだよ。」 「…ッ…。やめろ僕に触るな…」  佐倉は顔をゆがませて小さく息を吸い込み、苦しいんだろう、早口でつぶやく。  ぐにゃぐにゃの体をベッドにゆっくりと寝かすと、佐倉は自力で俺に背中を向け、うつぶせになった。 「…あ!…っく…」  ぶかぶかの寝巻きにくるまれた細い足を、折り曲げたり、伸ばしたりしながら、佐倉は耐えようとしていた。 「我慢しなくていいのに。喜んでるんだろ?体は。…ホラ。」  腰の下に手をまわして中心を探ると、佐倉のそこはすでにかなり固くなっている。 「や、アっ!」  服の上から軽く触っただけなのに、佐倉は悲鳴をあげた。背中のきれいな素肌が、うっすらと汗ばみはじめている。  “佐倉のために”、俺も服を脱いでベッドに乗ることにした。 「―― んん…」  佐倉の声が聞こえなくなった。激しい息づかいだけが聞こえてくる。 「佐倉?」  服を脱ぎ終わって、佐倉の体をまたいで、後ろから手をついて佐倉の顔を見る。  佐倉は声を抑えようとして自分の人差し指の根元を噛んでいた。噛んだ部分が赤くなってる。 「おいおい、」  慌てて後ろから抱え起こす。指を外そうとするが、佐倉はきつく噛んだまま離そうとしない。 「指がかわいそうだろ。ほら、離せよ。」  体を支えながら、服の上から片方の手でわざと佐倉の下半身を握ると、 「あぁ!」  ようやく指を離した。白く細い指に、赤く歯型がついている。血が出るところだ。 「だーめ。いいコにしないと、村崎に笑われちゃうよ?」  村崎を真似て、くすくす笑ってやる。 「立花くん…!」  寝巻きの紐をほどいて脱がす。佐倉の下半身があらわになる。 「…ほら。こんなに苦しそう。…楽になりたい?なりたいよね?」  わざと腿のあたりを撫でまわす。でも佐倉は、それだけでイッたんじゃないかと思うような声をあげた。 -----------→つづく

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