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愛しい人

――!!」  輪郭を確認してから思い切り指を挿入してやると、佐倉は歯をくいしばってのけぞった。  赤い紐が巻きついた白いのどが、すごくきれいだ。  手首を引っ張るたびに紐で繋がった首が締め付けられるのか、顔の赤みが増していく。指を増やすと、ますます緊張してガタガタと震え始めた。 「なあ佐倉…。声あげてもいいぞ、苦しいんだろ?」  指にかかる緊張感がたまらない。面白がって中で指をかきまわすと、佐倉はびくんと体を跳ねさせて、「は、あん!」と大きな声を出した。  やっぱり締め付けられてたんだ。声をあげた瞬間、佐倉は激しくむせて「や、だっ…こん…なの…こん、な……っ!…」と言いながら泣く。  さらに指を動かすと、「ひ、あッ、ああ!あっ…」と悲鳴混じりに感じまくり、ビクビクと体を震わせて、今度は簡単に“発射”して、佐倉はぐったりとした。  顔は、のけぞっていて見えなかった。  今は、胸を激しく上下させ、天井を向いて相変わらず目をクルクルとさまよわせている。  そこからいく筋も落ちていく涙の理由は、恥ずかしかったから?怖かったから? …奴じゃなく、俺にイかされたのが、嫌だったから?  それとも、奴を思い出して、悦びを感じてる?  佐倉の出した液が流れ落ちてきて、手袋をとおしてからでもその温もりがよくわかった。 「―― んっ…」  指を抜いて、温かな液とローションを混ぜ合わせるように撫で回すと、 「うっ、あ…立花くん…もう…やめてくれ!」  佐倉はかすれた声をあげ、震える足でマットを蹴り、俺から逃れようとする。 (逃がさない。)  すぐに反応して右手で佐倉の芯を強めに握る。 「あっ!う!」  クスリの効果は抜群だな。佐倉はまだ余裕でイケそうだ。やめろなんて言って、ホントは…  佐倉の上に重なる。  佐倉の顔を見下ろす。 「た、ち…ばな、く…ん…」  瞳の動きはさっきよりも落ち着いてきた。俺をにらむ可愛い瞳。突如として豹変し、敵となった俺を、必死に非難しようというところだろう。 「…交代。佐倉、今度は俺が気持ち良くなる番だよ。」  あのとき村崎に言われたセリフ。そのあと俺はクスリを飲んだ。でも今なら、十分やれる。それだけ興奮しているし、佐倉に対する今の欲情はハンパじゃない。  いや、もしかしたら俺も、ホテルで飲んだクスリの効果がまだ残っているのかも。  佐倉の足の間に入り、腕で腰を抱え上げるようにして持ち上げる。 「…欲しいだろ、佐倉…。」 「…やだ…こわいんだ、僕は…」 「欲しいって言えよ、素直に。」 「やめろ!僕はそんな…ッ…―― あっ!」  佐倉の絶叫。  佐倉の体が、俺の腕の中でうごめく。  細い足ごと体を強く抱きしめて、腰を浮かせ、そこに俺の激情を突き立てる。  佐倉のそこはやっぱり最高だ。  奥まで。いけるとこまで押し込む。 「うああああ!」 「…く…佐、倉…」  腰を動かす。佐倉を求めようとする俺の欲求に、俺は素直に従う。 …お前だって。  悦んでるはずだ。  ほら…ほら! 「…あ、ああ!あ――!!」 「…サツキを呼べよ佐倉…好きなんだろ…奴が!」  そうだ。ホテルでイくときも、佐倉は、奴の名前を呼んだ。あのときすでに、佐倉の目には、奴が映っていたんだ。  奴しか、映ってなかったんだ…。 ―― クソッ…  無我夢中で佐倉を求めた。佐倉の体を乱暴に動かしまくる。  佐倉がひときわのけぞるので、頭を押さえつけて、その顔を確認する。  佐倉は顔を背けようとしたが、ままならないまま、またピークに達し、俺の下腹を濡らした。  佐倉は、イく瞬間、切なそうにいっそう眉を寄せ、俺から、感情を伴わないよがり声をあげさせられた。  果てたあとも、俺が腰を動かすのをやめないので、勝手に体がまた痙攣を始め、それを止められずに目を開けて必死に俺を見た。  屈辱に耐え兼ねて、助けを求めている、というよりは、激高しているようだ。潤んだ黒い目ににらまれている。  でも、まだ許さない。  切なそうに歪んだ佐倉の、きれいな顔。  その顔すら、俺のものじゃないなんて。  俺がどんなに佐倉をイかせてやっても、佐倉のなかには村崎が、サツキがいる。 ―― はっ、はっ、はっ、  佐倉と俺を夢中で繋ぐ。ベッドがきしんだ音を立てる。  佐倉の口からは俺の動きに合わせてエロい声がだだ漏れで、こんないい声を出すんだから、心はどうだか知らないが、少なくとも体は悦んでいるに違いなかった。 「…そうだろ…佐倉…っ」 『僕は佐倉じゃない…』 …奴には、なんて、呼ばれていたんだ。 「…本当は、なんて呼んでもらいたいんだ…?」  腰を動かしながら、耳元でささやく。 「…あぁ…!…く…」 「…“佐倉”じゃなくて…なんて呼ばれたかったんだ…奴に…」 「…うっ…た、立花く…やめ…」 「俺は“立花”じゃない!」  細い佐倉の腰を捕まえてさらに激しく揺さぶる。両手を縛られ、足を広げられた佐倉は、人形みたいに俺のされるがままになっていた。 「や!あ!あ!…」  佐倉の悲鳴が心地いい。 『こらこら、壊れちゃうよ?』  だまれ!村崎!  壊してやる!お前の“お気に入り”なんか!  この肌も  この声も  今は全部、俺のものだ!  お前なんかに手出しはできない!  ざまあみろ! 「あ!あ…!」  佐倉がびくびくと痙攣しながら蜜をまき散らす。  ほら見ろ。やっぱり気持ちよかったんじゃないか。  興奮のせいか視界がやたらぼやけて映る。見たいのに。佐倉の、きれいで、いやらしくみだれた顔が。 「は…佐倉、あっ、あ…!」  まだ佐倉を苦しめてやりたいのに、限界まで動かし続けていたそこが、佐倉の絞まりに耐えきれずに勝手にのぼりつめてきた。 ―― かまわない。ぶちまけてやる。  どうしようもなく汚れきった、俺のこの感情を―― 「…さ…くら…!」 「…――!」  頭の中が真っ白になる。  耳に届いたのは、俺の声だったのか、佐倉の悲鳴だったのか… 「…ぁっ。はぁっ。はぁっ。」  イった ―― 「…あ…く…っ」  佐倉の中に、汚れた俺の蜜を吐き終えて、俺は佐倉の上に倒れ込んだ。  両足を解放してやったが、佐倉は一瞬のけぞって、キツイんだろう、荒く激しい呼吸を繰り返している。  佐倉の肌の香りを、強く、強く鼻に押しつけた。  佐倉が震えている。…いや、俺が震えているのかもしれない。  そうやってしばらく動けないままでいると、やがて、すすり泣くような声が聞こえてきた。 ―― 佐倉…  その声を聞いているうちに、俺の中に、今度は、突然、とてつもない罪悪感が込み上げてきた… ―― 俺は、佐倉になんてことを… …無償に怖くなり、佐倉を、さらに強く抱き締めた。  繋がったままの佐倉が、苦しそうにうめく。 …俺はどうしてしまったのか。  今日、初めて会ったひとに、しかも、佐倉は、男なのに…  守ってやらなきゃと思ってた。なのに俺は、佐倉を、めちゃくちゃにしてしまった。  佐倉の体と繋がった部分を、ゆっくり引き抜く。 「…ん…」  佐倉は一瞬びくんと大きく震え、俺の中でつらそうに息を震わせた。 (どうしたんだよ…俺は…)  つらそうに震える佐倉が、…可愛くて仕方ないんだ。今も。  佐倉のことを考えると、感情がコントロール出来なくなるみたいだった。  こんなことは、初めてだ。  佐倉…俺は…  佐倉が、  愛しい―― ―― そうか…  そうだったんだ…  佐倉が愛おしい。  こんな強い気持ち、今まで、女子に対してだって抱いたことはなかったのに。 …だからこんなにも、苦しくて、せつなくて…  俺だけのものにしたい――  そんな間違った欲求が、俺を狂わせた。  だって佐倉は、俺が、この世で最も嫌いな奴のことを想っていたから。  悔しくて、苦しくて…。ただ、せつなかった。 …それを佐倉にも、わかってほしかった。  でも、こんな方法は、ぜったい間違ってる。  佐倉が、俺を好きになってくれることなんか、もう二度とないだろう。  当然だ。  俺は、自分のわがままな欲求を伝えるために、最低な手段を選択してしまった。  こんなことをするなんて…  俺は完全に狂ってるのか…?  佐倉の首すじに、縄跳びの痕が見える。体を起こして、縄跳びをほどく。  手首を自由にすると、佐倉はまだ意識があったようだ、ぐったりとしていた顔をゆっくりこっちに向ける。  佐倉、…ごめん  謝っても許されることじゃない。でも、謝るべきだ。 ―― なのに、息が苦しくて、声が出ない。  佐倉は奇妙な顔をしていた。怒っているふうでもなく、悲しげなふうでもなく、困ったような、いや、少し不思議そうな顔で、じっと俺を見ている。  やがて俺に向かってよろよろと右手を伸ばし始めた。 ―― 佐倉?  意識はもうろうとしているようだ。まぶたが落ちそうなのを、必死にこらえて、何度かまばたきした。  伸ばしかけた手が力を失う前に、握りしめる。 …どうした?佐倉。  意識を失う直前、佐倉の口がかすかに動いた。  声は聞こえなかったが、その口は、確かになにかをつぶやいて、次の瞬間、 「…―― ツキ、さん…」 と、言った。  かすかに…でもはっきりと、そこだけ聞こえた。  佐倉の意識は、今度こそ完全に抜け落ち、俺の手の中から、佐倉の白い手がこぼれて落ちた。 ―― そっか…  俺を、村崎だと思って…  佐倉…お前、…やっぱり… どうしようもないやつだな。 ----------→つづく

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