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第9話
部屋が明るい。
もう、朝なのか。
青は、目を覆いながら体を起こすと、深呼吸した。
こんな朝はどれだけぶりだろう。
いつもは、夜遅くまで眠れなくて、朝は苦手だった。
新羅が起こしに来ても、布団に潜って出てこない時もあった。
だが、今日は自発的に目が覚めた。
朝日が眩しい。
清々しいとまでは思えないが、久しぶりによく眠った気がする。
「平手のおかげかなぁ。」
くすりと笑って頬さする。花が綻んだような笑顔だ。
組のアルファの男達がみたら、色めき立つこと間違いない、そんな笑顔だった。
そこへ、誰かがやってきた。
部屋の前で足音が止まる。
「坊。おはようございます。」
新羅だ。
ぴったり7時。
幾分のズレもない。
「新羅さん?おはようございます。どうぞ。」
青は、返答する。
失礼します。と、襖が明けられ新羅が表れる。
「坊、起きてらしたんですか。」
「うん。今さっきだけど。」
「珍しいですね。ご気分は?」
「うん。ありがとう。大丈夫です。」
「そうですか。」
すると、新羅が盆を持って入室する。
「朝食の用意ができております。」
青の枕元に、盆がおかれ香ばしい匂いがする。
青は、暫く盆を眺めると
「え?」
と、新羅を見返した。
それもその筈、昨日まで食事は台所で摂っていたのだから。
盆から立ち上る食欲をそそる匂い戸惑いながら、青は、新羅を見つめていた。
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