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第13話

「やけに甘ったるい匂いさせてるオメガがいると思ったら、竜崎じゃん!」 活発な声に視線をあげると、金髪の髪をツンツンに立てた猫目のヤンキーがいた。 B系ファッションに、じゃらじゃらとしたネックレスを下げて、青を見下ろしている。 「こ…が……?」 それだけ言うのが精一杯だった。 「ありゃ、覚えてくれてるんだ。光栄だね。」 虎牙(こが)は、ふんぞり返ってニヤリと笑う。 「丁度いい、アンタと話したかったんだよね。来てよ。」 そう言って青の腕を取り、立たせるとふらつく青をひょいと肩に担ぎ上げ、連れ去ってしまった。 駅のホームで人々は、それを呆然と見送るしかなかった。 …………。 人気のない、廃工場。 昼間だと言うのに薄暗い。 錆びた鉄の匂いと古くなったオイルの匂いがまざる。 冷たいセメントの床に寝転がされた青は、息も上がり意識も朦朧としているようだ。 「アンタ、それ、初めての発作?」 青の側にしゃがみこみ、顎を持ち上げ顔を覗き込む。 「よくまあ、そんな状態の大事な組の坊っちゃんを一人で外出させたもんだねえ。別にいーけど。こっちは、渡りに船って訳だ。」 「こ……が……?」 荒い息に飲まれて、名前さえもまともに呟けない。 「へっ。もう、喋るのもしんどいってか?任せときな、俺がすぐ楽にしてやるからよ。」

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