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第5話

昨日は異常な程に眠れた優はスッキリした頭で寮の門を出た。周りを見渡す。 「あいつは・・・いない。良かった」 昨日の事があり思い出すと起きてからずっとざわざわと身体が騒ぎ出すのだ。 (思い出すな、あんなやつ!) 出くわさないようにといつもより早く出た意味がなくなるので頭を振って追いやった。 教室に入り席に着くなり鞄から教科書と用紙を机に出していく。昨日は課題もやらずに寝てしまった。部屋でやればいいのだが隣に朝風がいるのだと思うと部屋では出来ずここであれば集中ができると考えた。 「HRまでやれば終わるだろ」 少しずつ生徒達が登校してきて挨拶を交わす。 やっと課題が終わり顔を上げた時、目の前に美人の顔があり優は吃驚する。 「うわ!なんだ凛か。おはよう。驚かすなよ」 「おはよ〜勝手に驚いたのはゆーちゃんしょ。珍しいね、ここで課題してるの」 「昨日ナニしてた?」 「きゃあ〜!ゆーちゃん小さい割にやるね!」 優を挟んで始まる姫路兄妹のやり取りはいつも優をからかいから始まるが決して嫌と思っていない。 「俺のは人並みだ!ってそんなことしてません!寝てたの」 教室で暴露した優を人並みね〜と2人して怪しく笑い恥ずかしくなり机に腕を組んで顔を埋めた。直ぐに凛から謝罪の言葉が返ってきて頭を撫でられる。 「ゆーちゃんごめんごめん。でもね、さっきから気になってたんだけど首の所にキスマークついてるよ?」 「なんだよ、無垢な顔しといてやっぱりやる事やってんじゃん」 キスマーク?とハテナが浮かんで凛の顔見る。そんな優の顔をみた凛は逆に驚いていた。 どこにあるか解らないが両手で首に触り、どこと後ろにいる蓮へと方向転換した所で扉が開いて入ってきた人物を視界に捉えて咄嗟に前を向き直して見えないように腕で壁を作って視界を遮断した。 「は?どうしたよ、小谷木」 「やぁ。おはよう。何かあったのかい?」 「「おはよう」」 近くへとやってきた今1番会いたくない人物、朝風の声が今日一段と耳に響く。 朝風の席は1番後ろで蓮の席から2個離れているが朝は必ず挨拶しにやってくるのだが初めて心の底から来て欲しくない思っている。 「ゆーちゃんのキスマークの話」 「首にあるんだって」 顔を伏せている優をよそに3人はやり取りをしていたが優は朝風の声を聞きたくなくて耳を塞いでいた。 「ああ、虫にでも刺されたんじゃないかな」 「「・・・笑顔が嘘くさい」」 やがてHRの始まるチャイムと共に担任が入ってきて朝風も席へと戻っていった。 やっとのことで緊張とざわついた心に落ち着きを取り戻し一息ついた。 (今日はあいつと会話はしないし視界に入れないぞ!) そう決意した優だったがそれはあとから偶然起きた出来事によって虚しく終わるのだがそんなことを知らない優は今日1日気を抜かないようにしようと張り切っていた。 それは昼休みの時に起きた。今日日直である優は国語教師にみんなの課題を集めて持ってきてと頼まれ職員室へ寄ったあと飲み物を買いに自販機ルームへ来ていた。 放課後まであともう少しとウキウキと気持ちが高まってコインをいれ牛乳を買おうとボタンを押す、そうここまで良かった。 誰かが背後からボタンを押し下からガタンと音がした。 (あっ?) 「こやぎちゃんは牛乳好きだね」 背後にいる人物は声で分かりいつも背後からやってくるのは朝風だけ。会いたくないとそう願ってもそれは虚しくそして簡単に終わりを告げた。 ガックリ肩が下がり大きくはぁあとため息が出て頭を抱えしゃがみ込んだ。 「僕は今日1日寂しかったんだ。何故か解るかい?」 落ち込んで丸まっている優を知ってか知らずか朝風は問いかけてくる。どうでもよく答えずに黙っている優。朝風は横に立ち同じようにしゃがみ肩を組まれ動けなくなる。 強く掴まれてホールドされていて動くことが出来ないのが正しい。 「ちょ、なに!」 「意識した?」 金髪が揺れ、サラリとし綺麗な色の髪は地毛のようにも見えるが染めたと言うが痛んでいなく綺麗だ。 急に音を立て優の身体の中を支配し考えがままならないまま再び2人の口が重なる。 やっと理解出来たのは飲み物を買いに来た他生徒の声で我に返り朝風を押し返しその場を後にした優だった。 「うわ !ごめんなさい、邪魔して!」 「いや、いいよ。僕達がこんな所でいちゃついていたのが悪いんだ」 朝風は走っていく優の後ろを笑みを浮かべながら眺め生徒に一言告げて、優が忘れていった牛乳を取り出して教室へと足を進めた。

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