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第12話

授業を終えて、机に思い切り頭をつけた。痛さと言うより脱力感が勝っていた。 「痛そうな音だね、ゆーちゃん」 「遅刻なんて珍しいじゃん。朝まで勤しんじゃったか?」 後ろと前から姫路兄妹の声が聞こえて落ち着くのは凛の声だけだった。兄の方は多分ニヤニヤしながら言っているのに違いない、絶対そうだ。 「朝風も来てないからてっきり2人で来るのかと思った、けどねぇ」 蓮の言葉にドキッと胸が跳ねた。何か知ってるのかとヒヤヒヤして顔を上げた。いかにもありましたみたいな反応に2人は見逃さなかった。 「「何かあったな」」 何故2人して感が良いのか、隠したところで全てお見通しである。確かに隠し事は上手くないのは理解してるが、見られたわけじゃないのに何故だ。 「上着はどうした?」 「・・・忘れた」 「なんで遅刻したの?」 「・・・目覚ましかけ忘れた」 「れーちゃんは?」 「・・・知らん」 前後からの質問攻めが凄くて内心落ち着かない。余計なことを喋らないように単語で答えていく。 「じゃあその後ろの首んところ赤くなってるけど?」 「っ!」 いつも間にか背後を取られて首元に触れられるとびくりと身体が震えた。 しまいには耳元に声が近づいてきて蓮の声が大きくなる。 「キスマーク・・・付けたのは朝風だろ?残念だな、お前には純粋無垢でいて欲しかったのに」 それにどんどんと顔が赤くなりやがて熱くなっていく。否定すればいいのに確信づいてきた蓮に言葉が出てこない。心配そうに見ている凛と顔は見えないが声色が変わり雰囲気が突如怖くなった蓮。その場から逃げたいと思ったのは初めてだ。 「蓮、何してんだ」 「お〜朝風じゃん。社長出勤!やるなあ〜。別に話してただけだって、何怒ってんだよ」 一瞬にしていつも通りの蓮に戻って行った。まだ胸がなってるのを深呼吸して落ち着かせる。よりにもよって朝風本人も登場したこの場から本当に離れたくなった。 (頭が痛い・・・) 「ごめん、凛。俺体調悪いから早退する」 「私先生に伝えておくね」 「いや、呼び出しくらってるから自分で伝えるよ」 鞄を持って教室から出ていく。重苦しい空気から解放されたが脚が重たい気がして更に頭痛が酷くなる。 「ゆーちゃんふらふらだよ〜先に保健室行こうね」 「あ・・・ごめん、凛」 「蓮、保健室行ったって伝えてね!そこの2人喧嘩すんなよ!」 しねぇよ、と蓮は笑って答えるが蓮を見る朝風はそうな風には見えなかった。 2人の空気も重たくてそれに連なって優の心も重りが乗ったように苦しい。 「も〜歩けないならこうしちゃうからね」 そう言って凛は優を横抱きにして持ち上げた。視界が高い。と一瞬思ったが女の子に姫様抱っこされている事実に恥ずかしさが込み上げてきた。 「ちょ、ちょっと凛やめろ!」 「しっかり歩かないゆーちゃんが悪いんでしょ〜掴まらないと落ちるよ」 小さいから軽いねと余計な事を言ってくるが、凛のは優しさがありほっとする。場の雰囲気を戻すのも相手を和ますのも上手い。 こういう子が彼女だったらなと思う。でも彼女に姫様抱っこはないな。 「失礼します、先生いますか?」 「はい、いますよ。ベッドなら空いてるから使って」 (いない方が良かったのに!けどなにも突っ込まれなくてよかった!) ベッドに乗せられ布団を掛けられる。先生に症状を伝えて授業の欠席連絡をかいてもらい凛は放課後にまた来ると言って退出した。 「先生、頭も痛いけど心も痛いんですけど」 「恋してんじゃないのー」 カーテン越しに先生の答えが返ってくる。モヤモヤした結果、先生にそんな質問して見ることにしたが恋という単語に胸がなる。 「誰が?」 「小谷木くんが?」 「誰に?」 「それは知らないけど頭に浮かぶ人?」 (浮かぶ人・・・?いやいや、好きじゃないし!違うし!) 「布団で暴れない。頭痛いんでしょ、少し寝なさい」

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