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第14話

また沈黙が流れる。一方的に言い放ってもモヤモヤした感情は無くならなくて顔すら上げられない。 その沈黙を先に破ったのは朝風だった。 「軽率な行動だったとは反省してるし、疑わなかったのも。だけど・・・好きな物に目がないんだ」 好きという言葉に反応してしまう。好きというのは昨日も言っていたが、チョコの事だ。 「あんなのイタリアでは悪戯心でやる子も居たからその時は相手が山ほど居たから何とかなってた。今回は寝てれば治まると思ってたらこやぎちゃんが目に映って理性が効かなくて・・・ごめん」 「だからなんでお前が謝るんだよ!散々ちょっかい出しといて、き、キスだって、そういう時なんで引くんだよ」 朝風の言葉に腹が立ってさげていた顔を上げ怒りをぶつける。 それに朝風は狼狽えるこもなくまっすぐな瞳と目が合うと柔らかい笑みを零した。 「今までのは君に振り向いて欲しいからだ。さっきこやぎちゃんが言ってた僕との関係って何?」 「そ、そんなの今は関係ないだろ・・・」 「今だから・・・僕にとっては必要なんだ」 手を伸ばして優の手に触れてくると綺麗な青い瞳に自分が映る。優の体温が高いのか朝風のものなのか解らないが触れてる手が熱い。 少し距離を詰めて手の甲に唇をあてキスをした。その動きを目が離せず見ていて顔を上げた朝風と目が合い身体が跳ねた。 「あんな状態ではキスはできないよ。前にしたのは逃げる君が可愛くてついね」 何故この男がこんなに自分に執着するのか理解が出来ないし同じ男にこんなに甘い言葉をつらつらと言えるのか。 朝風の甘い声が響いて、鳴り止まない心臓が煩くて言葉に詰まった。 「な、なんで俺なんだよ」 「一目惚れだから。好きな子にはゆっくりじっくりと可愛がって甘やかしたい」 最初の出会った頃に告白されたがあんなの冗談でからかって遊んでいるとしか思っていなかったのに迷いもない真っ直ぐな目と言葉を聴いて嘘でないのだと知る。 だからと言って直ぐに答えることも出来ない。 「こやぎちゃんが言ったように昨日の事は忘れる。望むなら僕と君の関係はそのままでいい。なんなら関わるのを辞めていもいい、君に嫌われるのは嫌だから」 決めるのはこやぎちゃんだと促されて悩んでしまう。確かに朝風の気持ちを知って感情は前と同じようにいられなくなった。 (試すような言い方・・・ずるいよ) 目を少し下げた先に見えたのは鎖骨でその辺に赤い点があった。思い出すのは昨日自分がつけたキスマークだった。 それを見て後戻りは出来ないのだと錯覚のように頭で誰かの声がした。 「・・・そのままでいい」 「仰せのままに」 再び手の甲キスをして少し安心したかのような笑みを浮かべた。

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